精選版 日本国語大辞典 「油断」の意味・読み・例文・類語
ゆ‐だん【油断】
〘名〙 (語源未詳)
① 気をゆるすこと。たかをくくって、注意をおこたること。ぬかりがあること。不注意。
※延慶本平家(1309‐10)三末「夜軍はよもあらじ、夜あけて後ぞ軍はあらむずらむとて、ゆたむしたりける所に」
※虎明本狂言・竹の子(室町末‐近世初)「そうじて竹の子にかぎって、人がほしがる物じゃによって、ゆだんがならぬ」
② 怠けおこたること。物事をなおざりにすること。
※土井本周易抄(1477)二「油断をせば、今日から明日の道は害があらうぞ」
※浮世草子・武家義理物語(1688)一「そもそも此女武道の油断(ユタン)をさせずして」
③ ゆったりとした気分をもつこと。四国地方でいう。
※一茶方言雑集(1819‐27頃)「ゆたんなされ 四国 ゆるりとござれと云事」
[語誌]①に挙げた「延慶本平家」に見える「ゆたむ」が早い用例である。「平家」諸本において、この箇所の表現が同じであるのは「長門本平家‐一三」だけで、「屋代本平家‐七」では「打解(うちとけ)たる」、「源平盛衰記‐二九」では「取延(とりのべ)て」と表現されている。また、延慶本全体での用例はこの一例だけで、「保元」「平治」「覚一本平家」にも用例は見えないところから、それほど一般的ではなかったと考えられる。
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