ナシケンモン(読み)なしけんもん

改訂新版 世界大百科事典 「ナシケンモン」の意味・わかりやすい解説

ナシケンモン (梨剣紋)
Acronicta rumicis

鱗翅目ヤガ科の昆虫。ユーラシア大陸の温帯分布。開張約3.5~4cm。前翅は黒褐色,後翅暗褐色である。本種を含むケンモンヤガは世界の温帯域に分布し,日本に約20種を産し,幼虫は毛束を生じ,ヤガ科としては異例。おもに樹木の葉を食べるが,本種の場合は低い灌木やタデなどの草本につくことが多い。ケンモンの名は,一部の種の前翅にサーベル状の黒色紋を有することによる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナシケンモン」の意味・わかりやすい解説

ナシケンモン
なしけんもん / 梨剣紋蛾
[学] Viminia rumicis

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤガ科に属するガ。はねの開張35~40ミリ。前翅は暗褐色、黒色の横線が多数あって細かく鋸歯(きょし)状をなし、横脈上に小さな黒環がある。後翅は淡褐色。幼虫の食性は広く、樹木、低木、草の葉を食べる。体長約30ミリ。胴部は黒色または橙褐色(とうかっしょく)、各節の瘤起(りゅうき)に白色の毛を密生している。年に2、3回発生する。日本全土にごく普通に産し、都市部の庭にもよく発生する。成虫灯火に飛来する。

[井上 寛]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナシケンモン」の意味・わかりやすい解説

ナシケンモン
Apatele rumicis oriens

鱗翅目ヤガ科。多くの果樹農作物などを食害する害虫の一つ。前翅の開張幅 33~42mm。体は太く,体,前翅とも灰黒色,前翅には黒色の条紋があるが目立たない。後翅は灰褐色。普通に多産するガで,成虫は4~9月に2~3回発生する。成熟幼虫は体長 30mmほど,黒色で橙褐色紋を散在し,白色長毛を粗生する。食性に富み,サクラ,ナシやマメ類などを食べる。日本各地のほか,朝鮮半島,中国,ヨーロッパに分布する。

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