日本大百科全書(ニッポニカ) 「バルデス」の意味・わかりやすい解説
バルデス
ばるです
Juan de Valdés
(1490?―1541)
スペインの人文学者。エラスムスの宗教思想に共鳴し、カトリックの改革を求めた、いわゆるエラスムス主義者で『メルクリオとカロンの対話』の著者として知られるアルフォンソ・バルデスAlfonso de Valdés(1490?―1532)と双生児の兄弟。アルカラ大学に学び、『キリスト教の教理をめぐる対話』(1529)を発表したが、これはエラスムス主義者の立場から書かれた一種の教理問答書で、異端審問所の摘発を受けた。そのためイタリアへ渡り、同地で急進的な信者たちを指導し、スペイン人としては珍しいプロテスタントになった。文学的な見地からは、スペイン語の起源や文体を論じたり、当時の文学作品に対する批評がみられる『言葉をめぐる対話』(1535)が興味深い。
[桑名一博 2016年3月18日]