バンケルエンジン(読み)ばんけるえんじん(英語表記)Wankel engine

翻訳|Wankel engine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バンケルエンジン」の意味・わかりやすい解説

バンケルエンジン
ばんけるえんじん
Wankel engine

ドイツのバンケルFelix Wankel(1902―1988)が考案し、1959年に実用化した4行程機関(4サイクルエンジン)の一種。きわめて小さい半径の回転運動をするクランクについた偏心三面回転体が、まゆ状のケース内を擬似回転運動する。回転体の三つの角はケースの内面(外包絡面)に接しており、回転体はクランク軸の3分の1の速さで回転する。回転体の三つの面とケースの間のすきまが、シリンダーピストンでできる燃焼室に相当し、回転体の1回転で、一つのすきまが4行程機関(4サイクルエンジン)と同じ行程を経過する。したがって回転体の1回転で、三気筒がサイクルを完結することに対応する。クランク半径が小さく、ほとんど回転運動に近いので、振動が少なく、排気量当りの大きさが小さく高出力である。しかし、冷却損失が多く、気密が容易でなく、熱効率を向上させるのが困難である。また、吸気と排気は弁ではなく、小型2行程機関(2サイクルエンジン)と同様にケースの面に開けた穴(ポートという)で行われるので、吸・排気管内の気中振動の影響を受けやすい。そのため低負荷・低回転数などでは吸・排気が不十分になり、燃焼も不安定になるので排気清浄化の面で不利であったが、21世紀に入って排気清浄化に対応した改良エンジン搭載車が市販された。自動車などで実用化されているのは日本だけである。

[吉田正武]

『神本武征監修『自動車技術叢書1 夢の将来エンジン(技術開発の軌跡と未来へのメッセージ)』(2009・自動車技術会)』『John Robert DayEngines ; The Search for Power(1980, The Hamlyn Publishing Group Ltd.)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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