バーダー(英語表記)Benedikt Franz Xaver von Baader

改訂新版 世界大百科事典 「バーダー」の意味・わかりやすい解説

バーダー
Benedikt Franz Xaver von Baader
生没年:1765-1841

ドイツのロマン主義の思想家。ミュンヘンに生まれ,医学,自然科学を学び,鉱山役人ミュンヘン大学哲学教授の職につく。サンマルタンの影響を受けた自然哲学は,ノバーリスやシェリングに注目された。近代の哲学に反対し,〈神,われを思う。ゆえにわれ思い,存在する〉を哲学の出発点とする。ベーメタウラーなどの神秘思想の伝統を生かすことによる時代の問題の解決を目ざし,社会問題ではプロレタリアートの権利の擁護を訴えた。カトリックであったが,プロテスタントや東方正教との協力を求め,とくにロシアに関心を寄せ,神聖同盟の考えに影響を与えた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バーダー」の意味・わかりやすい解説

バーダー
Baader, Franz Xaver von

[生]1765.3.27. ミュンヘン
[没]1841.5.23. ミュンヘン
ドイツの哲学者神学者。医学,鉱山学を学んだのち,哲学に転じ,J.ベーメ,F.シェリング,フランスの神秘思想家サン=マルタンの影響を受けた。 I.カントに代表される批判哲学を批判し,「神的知の認識」を説いた。『全集』 Sämtliche Werke (16巻,1851~60) がある。

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世界大百科事典(旧版)内のバーダーの言及

【シェリング】より

…〈自我がすべてである〉というフィヒテ主義に代わって〈すべてが自我である〉と主張される。晩年のシェリングは,ベーメの影響を受けて,神秘主義者のバーダーと知り合い,創造説と汎神論と人間の自由という3者の鼎立(ていりつ)可能性を説いて,神の実存と,神の実存の根底〈神の内なる自然〉とを区別し,神秘的な創造説と歴史哲学を展開,《人間的自由の本質》(1809),《世代論》(1811‐14)を著す。彼は,つねに自我と有機的な自然との相互浸透を基盤にして,自由と自然との一致を追求したが,独断論と神秘主義の傾向はおおいがたい。…

【ニヒリズム】より

…一説によれば,弁証法を神学の対象にも適用したアベラールの説を継承した12世紀の神学者たちの一派のいわゆるニヒリアニズムnihilianism,すなわちキリストの人間性は偶有性にすぎず,キリストは人間としてはニヒルであるという中世キリスト論が,当時のヤコビたちに影響を与えていたといわれる。B.F.X.vonバーダーの場合になると,ニヒリズムは単に哲学の世界の問題であるにとどまらず,教会の教えに対する抗議という19世紀ヨーロッパ最大の危険思想として社会的に問題とされるにいたる。彼によれば,近代の科学的知性の無節度な展開の結果として信と知の分裂が生じたところにニヒリズムの根源がある。…

※「バーダー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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