16,17世紀に最も広く行われた宮廷舞踊の一つ,またその音楽。とくに舞踏会の初めの行列の踊りに用いられたらしい。名前はパドバ(イタリアの都市)風舞曲の意味で,パドバーナpadovana(イタリア語)とも呼ばれる。しかし踊りの威厳のある動きが尾を広げたクジャクに似ているところから,スペイン語のpavón(クジャク)に由来するとの説もある。当初は中庸の2拍子であったのが,時代とともに緩やかなテンポになり,この後にサルタレロやガイヤルドといった急速な3拍子の踊りと組み合わされる例も多い。音楽は合奏曲であったが,のちにはリュートや鍵盤用の独奏曲も書かれ,華やかな装飾音を多用して様式化が進み,バロックの舞踊組曲へと取り込まれていった。
執筆者:小林 緑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ゆっくりとした二拍子の舞曲。語源はイタリアの町パドバ(古名Pava)にあり、パバーヌは「パドバ風舞曲」の意であるが、古くはスペイン語でpavoとよばれる孔雀(くじゃく)の優雅な動きに由来すると考えられていた。1508年のリュート曲に初めて現れ、1520年代からヨーロッパ中に広まる。荘厳な行列に用いられるほか、三拍子の速い舞曲(ガリアルド、サルタレッロ)と組み合わされることも多い。18世紀には姿を消すが、20世紀には、ラベルの『亡き王女のためのパバーヌ』など数例がある。
[関根敏子]
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