パラモリブデン酸塩 (パラモリブデンさんえん)
paramolybdate
モリブデン酸塩の一つ。七モリブデン酸塩heptamolybdate MⅠ6[Mo7O24]・nH2O(7MoO3・3MⅠ2O・nH2O)の通称。ポリモリブデン酸塩のうち最も得られやすく,分析試薬などで通常モリブデン酸塩と呼ばれるのはこれであることが多い。八面体形のMoO6の稜を共有した七核錯体のイソポリ酸イオン[Mo7O24]6⁻が存在する(図)。一般に酸化モリブデン(Ⅵ) MoO3水溶液に,水酸化アルカリを加えて熱すると得られる無色の結晶で,水に可溶。水溶液からの再結晶が可能であるが,煮沸すると分解しやすい。
アンモニウム塩(NH4)6[Mo7O24]・4H2Oは無色の単斜晶系柱状晶。90℃で無水和物となり,150℃ですべてのアンモニアを失う。190℃以上に熱すると分解して暗色となる。強酸で分解。カリウム塩K6[Mo7O24]・4H2Oは無色の単斜晶系柱状晶。乾燥状態で安定。熱すると無水和物となり,強熱すれば黄色ガラス状となって分解する。ナトリウム塩Na6[Mo7O24]・22H2Oは無色で光沢ある単斜晶系柱状晶。60℃で7水和物となり,78~100℃で結晶水に溶けて分解する。水に易溶。溶解度は水100gに対し157.1g(30℃)。冷水溶液はやや酸性。水溶液は不安定で,120℃で速やかに加水分解する。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
パラモリブデン酸塩
ぱらもりぶでんさんえん
paramolybdate
七モリブデン酸(6-)イオンMo7O246-の塩の慣用名で、このイオンは正八面体型6配位構造のMoO6単位が頂点の酸素原子を共有しながら7個縮合した構造をもつ。遊離酸は単離されていないが、酸化モリブデン(Ⅵ)をアンモニア水あるいはアルカリ水溶液に溶解して加熱するとアンモニウム塩、アルカリ塩の結晶を得る。
同族元素のタングステンにおいては、パラタングステン酸塩はWO6八面体単位12個が縮合した構造となる。
[岩本振武]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
パラモリブデン酸塩
パラモリブデンサンエン
paramolybdates
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
世界大百科事典(旧版)内のパラモリブデン酸塩の言及
【ルナール】より
…ゴーティエ・ダラス,クレティアン・ド・トロアと並ぶ才筆の作家で,1222年から34年までボーベの司教であったミロン・ド・ナントゥイユの庇護を受けた。1200年ころ書かれエノー伯ボードゥアン4世に捧げた《鳶物語》《水鏡の歌》《薔薇の物語Roman de la rose》等,恋愛の微妙な心理を鋭い現実描写を背景にとらえた韻文(八音節)小説を残した。《薔薇の物語》は13世紀のアレゴリー詩《薔薇物語》との混同を避けるため原題によらず,作中の主人公の名前を取って19世紀以来《ドールのギヨーム物語Guillaume de Dole》と今では呼ぶ。…
【アレゴリー】より
…近代小説の立場からすれば,一見,単純素朴とも思われるこの方法によって,中世の詩人,哲学者らは,人間の精神,心理,情念の世界を描き,人間の倫理的・宗教的課題を追求しようとした。《薔薇物語》(13世紀,フランス),ダンテの《神曲》(14世紀,イタリア),ラングランドの《農夫ピアーズの夢》(14世紀,イギリス),〈中世道徳劇〉,さらに近代にいたって,バニヤンの《天路歴程》(1678,84)など,寓喩的方法への依拠の仕方には,それぞれ深浅の差があり,またその主題も異なるが,いずれもアレゴリーの代表傑作と言いうる。アレゴリーはまた,近代において,社会的・政治的風刺の方法としても用いられた。…
【作法】より
…言動の範とするに足る例,避けるべき悪しき例を,筋の展開につれて学びとることができたからである。また,愛の夢想をアレゴリーの手法で精細に描写した《薔薇物語》(ギヨーム・ド・ロリス作,1220‐40)も,そのような役割を果たしえた。愛の諸相を分析した司祭アンドレの《恋愛術》の翻訳(1290)は,教条的な愛の作法書として機能したと思われる。…
【チョーサー】より
…こうしたいわば〈高級官吏〉としての多彩な経歴から得た人間理解の深さは,後期作品のリアリスティックな人間観によく表れている。 習作時代は,もっぱらG.deマショー,E.デシャン,J.フロアサールの作品や《[薔薇物語]》など,当時宮廷に流行したフランス文学の影響を受け,みずからも《薔薇物語》の英訳を試み,今日その断片が残っている。この物語は,まったく対照的な2人の作者の手になり,その前編が理想主義的な宮廷風恋愛の伝統を賛美しているのに対して,後編はこれを否定し,愛の目的を種の保存と考え,現実主義的な世界観を展開する。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」