化学辞典 第2版 「酸化モリブデン」の解説
酸化モリブデン
サンカモリブデン
molybdenum oxide
【Ⅰ】酸化モリブデン(Ⅳ):MoO2(127.94).二酸化モリブデンともいう.MoO3を H2 またはNH3と470 ℃ 以下で(470 ℃ 以上では金属まで還元される)還元するか,金属モリブデンと水蒸気を800 ℃ で反応させて得られる.褐色ないし紫色の銅光沢を帯びる固体.非酸化性の鉱酸には溶けないが,濃硝酸には溶けて MoⅥに酸化される.密度6.44 g cm-3.電気の良導体である.潤滑剤,表面処理剤,潤滑油などに用いられる.[CAS 18868-43-4]【Ⅱ】酸化モリブデン(Ⅴ):Mo2O5(271.88).五酸化二モリブデンともいう.MoO3にモリブデン粉末を加えて窒素気流中750 ℃ で熱すると得られる.暗紫色の粉末.水に不溶,硫酸,塩酸に難溶.常温で高い電気伝導性を示す.【Ⅲ】酸化モリブデン(Ⅵ):MoO3(143.93).三酸化モリブデンともいう.モリブデン金属を酸素中で熱すると最終生成物としてMoO3が得られる.光沢のある結晶で,赤熱すると黄色になり,冷やすと白色に戻る.融点795 ℃,沸点1155 ℃.密度4.69 g cm-3.水に微溶,通常の酸水溶液に不溶であるが,アルカリ溶液やアルカリ融解物中には容易に溶けてモリブデン酸塩を生じる.モリブデン鋼添加剤,腐食防止剤,エナメル,陶磁器のうわぐすり,農薬,分析化学試薬,酸化触媒,光触媒の製造などに用いられる.[CAS 1313-27-5][別用語参照]モリブデン酸
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報