日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビニル化合物」の意味・わかりやすい解説
ビニル化合物
びにるかごうぶつ
vinyl compound
ビニル基CH2=CH-をもつ化合物の総称で、エチレンおよび一置換エチレンがこれに含まれる。代表的なビニル化合物CH2=CHX(Xは置換基)を に示す。これらの化合物の多くは石油化学工業によりエチレンやプロピレンから合成され、重合によりプラスチックや合成繊維を製造するのに用いられる。
ビニル化合物は重合により高分子状のポリビニル化合物をつくりあげている単位とみなすことができ、このような立場からビニル化合物をビニル単量体(ビニルモノマーvinyl monomer)とよぶことがある。
単量体のビニル化合物は二重結合をもっているので付加や重合などの反応性に富むが、重合によりできるポリビニル化合物には二重結合はなく飽和化合物であるので安定で、プラスチック、合成繊維、塗料、合成皮革などに用いられている。 のX=OHに相当するビニルアルコールやX=NH2に相当するビニルアミンは存在しない。その理由は、たとえビニルアルコールが生成しても速やかに互変異性化してアセトアルデヒドになってしまうからである。ビニルアミンも同様にイミンになる。
しかし、ビニルアルコールの重合体に相当するポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルの加水分解によりつくることができる。
[廣田 穰 2015年7月21日]