化学式CH3(CH2)5CH(OH)CH2CH=CH(CH2)7COOH。リシノレイン酸ともいう。(+)12-オキシ-シス-9-オクタデセン酸。オレイン酸の12位の炭素につく水素をOH基で置換した構造をもつ代表的なオキシ酸である。グリセリドの形でヒマシ油脂肪酸の主成分(80~87%)となっており,ヒマシ油の特異な性質はこれが原因である。融点α=7.7℃,β=16.0℃,γ=5.0℃,沸点230~235℃(9mmHg),比重d247・4=0.940,屈折率n2D0=1.4716,比旋光度[α]2D5=+7.79°。エチルアルコールなどとは自由に混合するが,石油エーテルには難溶である。熱に不安定で熱分解して10-ウンデセン酸CH2=CH(CH2)8COOHとヘプタナール(エナントール)CH3(CH2)5CHOになる。硫酸,硫酸水素ナトリウムなどの脱水剤の存在下に加熱すると,リノール酸および共役二重結合を有する9-11-オクタデカジエン酸を生ずる。これは脱水ヒマシ油脂肪酸の成分である。リシノール酸に濃硫酸,クロロスルホン酸などを低温(約10℃)で作用させるとリシノール酸酸性硫酸エステルCH3(CH2)5CH(OSO3H)CH2CH=CH(CH2)7COOHを生ずる。このような反応を硫酸化sulfationといい,生成物をアンモニアまたはソーダ油で中和したのが硫酸化油(ロート油)である。
執筆者:内田 安三
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不飽和ヒドロキシカルボン酸の一つ。リシノレイン酸ricinoleic acidともよばれる。12-ヒドロキシ-9-cis(シス)-オクタデセン酸の構造をもつ。
グリセリドとしてひまし油中に存在するので、ひまし油をけん化して得られる混合脂肪酸をアセトンに溶かして、分別結晶を行うと得られる。
常温では無色の油状液体で、エタノール(エチルアルコール)、エーテル、クロロホルムによく溶ける。塗料、印刷インキ、潤滑油、化粧品、ドライクリーニング用のせっけんを製造する原料となる。このほかに、ひまし油は下剤、軟膏(なんこう)基材として薬用に供されている。
[廣田 穰 2016年11月18日]
リシノール酸
化学式 C18H34O3
分子量 298.5
融点 α;7.7℃
β;16.0℃
γ;5.5℃
沸点 α;230~235℃/9mmHg
比重 0.940(測定温度27℃)
屈折率 (n)1.4716
旋光度 [α]+7.15°
[R(Z)]-12-hydroxy-9-octadecenoic acid.C18H34O3(298.46).リシノレイン酸ともいう.グリセリドとしてひまし油(80~85%)中に存在する.ひまし油の混合酸からアセトン溶液を冷却(-20~-15 ℃)して飽和酸を除いて,精製を繰り返すと得られる.結晶状の塊.融点5.5 ℃,沸点245 ℃(1.33 kPa).0.940.+7.15°(アセトン).1.4716.アルコール類,アセトン,エーテル,クロロホルムに可溶.ドライクリーニング用せっけんの原料.[CAS 141-22-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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