日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピーター・グライムズ」の意味・わかりやすい解説
ピーター・グライムズ
ぴーたーぐらいむず
Peter Grimes
イギリスの作曲家ブリテンのオペラ。プロローグと三幕六場よりなり、1945年に完成。同年ロンドン初演。イギリスの詩人クラッブの長詩に基づいたスレーターの台本による。舞台はイギリス東海岸の小さな漁港、漁師ピーターは徒弟の少年を出漁中に死なせてしまい、村人たちの非難を受ける。頑固な性格の彼を寡婦エレンだけは理解しているが、彼が別の少年を徒弟として雇ったことから村人たちとの対立は深まり、その争いに巻き込まれて少年は死ぬ。追い詰められたピーターは沖に舟を出し、自ら舟とともに身を沈める。このオペラは、特異な状況の下で追い詰められてゆく人間の心理をみごとに描写しているところが特徴で、ブリテンの出世作であるとともに、第二次世界大戦後のオペラのなかでもとりわけ傑出した作品の一つである。なお各場はそれぞれ間奏曲で連結されているが、これらはのちに作曲者の手で演奏会用にまとめられた。日本初演は1956年(昭和31)二期会による。
[三宅幸夫]