改訂新版 世界大百科事典 「クラッブ」の意味・わかりやすい解説
クラッブ
George Crabbe
生没年:1754-1832
イギリスの詩人。サフォーク州オールドバラ生れ。1775年医師の資格を得て帰村するが,村の生活に耐えきれず,80年ロンドンに出てエドモンド・バークの庇護を受け,82年以降は聖職にあって詩作を続けた。《村》(1783)は農村の生活の悲惨さを赤裸々に歌い,農耕詩や牧歌という伝統の中で美化された田園生活の虚妄をあばいて大きな衝撃を与えた。《詩集》(1807)には,《村》の主題を引き継ぐ物語詩《教区の記録》,狂気の心理を掘り下げた対話形式の詩《ユースタス・グレー卿》がある。代表作《自治村The Borough》(1810)は24編の〈書簡〉から成り,故郷オールドバラの人々の生活を描出した。E.B.ブリテンのオペラ《ピーター・グライムズ》(1945初演)は第22編に拠ったものである。詩作としてほかに《物語集》(1812),《邸の物語集》(1819)などがある。ワーズワース,スコット,バイロンなどの称賛を得たが,素材は新しいものの,詩体は旧時代の弊を脱し得ぬところにおのずと限界があった。
執筆者:山内 久明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報