フォーマリズム(英語表記)formalism

翻訳|formalism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「フォーマリズム」の解説

フォーマリズム
formalism

形式主義。芸術における形式と内容の問題は古来から幾度となく論争の対象になっているが,現代芸術における直接的な参照点は,1910年代から 30年代にかけてソビエト・ロシアで起こった文学理論である。 V.シクロフスキー,R.ヤコブソン,P.ボガトゥイリョフらによるこの理論は,形式の客観的な考察による批評の科学性,芸術の内的論理の独自性を重視し,前衛芸術の批評への有効性を実践したもので,ロシアでは反動化により解体を余儀なくされたが,西欧世界においては芸術のモダニズムと前衛主義を支える,今日なお有効な理論である。美術においては特に,アメリカの抽象表現主義からポスト・ペインタリー・アブストラクションを経て一部のミニマル・アートに至る変遷を語る格好の理論として,C.グリーンバーグに代表される戦後批評の柱になっている。しかし近代の見直しという立場から,あるいはポスト・モダニズムの立場から,さらにアメリカ中心の現代美術史を正す立場から,反フォーマリスティックな創作と批評が噴出する。このような相互の揺り戻しはあるにせよ,今なおフォーマリズムと反フォーマリズムが現代美術の思想を支える二大潮流であることは確かであろう。

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知恵蔵「フォーマリズム」の解説

フォーマリズム

作品の主題や内容よりも、形式や形態を重視し、その分析を通じて作品を解釈しようという形式批評の態度。特に、米国の美術評論家クレメント・グリーンバーグがカントの自己批判性まで遡りながら確立した批評理論を指す。作者の感情や意図、社会的背景、図像学的な解釈、鑑賞者の印象など、従来の批評尺度を排除し、純粋に視覚的な言語のみを作品の分析手段に用いようとした。同時代の抽象表現主義の先駆として、キュビスムや構成主義などのモダニスム絵画史の流れを整理するなど、同時代の芸術運動を理論的に支えた。後のミニマリズムコンセプチュアリズムを生み出す契機ともなった。

(山盛英司 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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