形式主義(読み)けいしきしゅぎ

精選版 日本国語大辞典「形式主義」の解説

けいしき‐しゅぎ【形式主義】

〘名〙
① ものごとの形式を重んじてそれにこだわり、内容を軽視もしくは無視する立場。また、その考え。形式論
文明批評家としての文学者(1901)〈高山樗牛〉三「実に形式主義、方便主義に堕落せる十九世紀末の文明と」
② 哲学で、認識の客観性の根拠主観に求めるカントの批判的観念論の立場。
倫理学で、道徳普遍妥当性の根拠を実践理性の純粋形式的な道徳法則(定言的命令)におくカントの立場。
美学で、芸術作品の内容そのものの観念的把握よりも、表現上の美的原理や統一作用に価値を見出そうとするヘルバルトらの立場。
数学で、数学の理論とは、ある種の記号の列を一定の規則に従って変形することにより得られる記号の列の総体に他ならないとするヒルベルトの立場。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「形式主義」の解説

形式主義
けいしきしゅぎ
formalism

質料や内容に対して形式を重視する立場の総称。一定の学問,特に数学 (→数学基礎論 ) や論理学において真理の性格についていわれる形式主義は,の真理が実在との関係ではなく記号の約束事もしくは定義のみによっているとする理論。認識論では質料の存在や重要性を無視し,認識の妥当性や真理性をただ思惟の形式からのみ考える立場。この意味の形式主義は美学や倫理学における形式主義につながる。形式主義美学は感覚的要素や芸術の表現内容を美の契機として認めず,もっぱら要素間の結合や表現法によって美を考える。倫理学 (特にカント倫理学) では道徳の根拠を実質的倫理価値との関係ではなく道徳法則との整合性に求める立場が形式主義といわれる。

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百科事典マイペディア「形式主義」の解説

形式主義【けいしきしゅぎ】

一般に事物の内容よりも形式を重んずる立場。哲学・倫理学では認識あるいは道徳の普遍妥当性の根拠を純粋に形式的な法則に求めるカントあるいは新カント学派,特にリッケルトの批判主義の立場をいう。数学基礎論では,論理主義直観主義に対し,形式化された数学の公理系の無矛盾性を証明することによって問題を解決しようとするヒルベルトの立場。
→関連項目ブローエル

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デジタル大辞泉「形式主義」の解説

けいしき‐しゅぎ【形式主義】

内容よりも形式を重んずる考え方。
カントのように、認識の普遍妥当性を認識形式に関して吟味する立場。道徳に関しては、その根拠を実践理性の純粋形式的法則とする。
美学で、感覚的要素の意義を否定し、形式に美の原理を認める立場。

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世界大百科事典 第2版「形式主義」の解説

けいしきしゅぎ【形式主義 formalism】

20世紀初頭,集合論における逆理(パラドックス)の出来(しゆつたい)を一つの契機として始まった数学基礎論において,B.A.ラッセルの論理主義,L.E.J.ブローエルの直観主義と並んで,D.ヒルベルトによって主張された立場である。ヒルベルトは,彼の公理主義の立場から,数学を述語論理の中で形式化した。すなわち定理とか証明は一定の法則によって並べられた単なる記号の系列であって,それらの意味は考えないで,その公理的・形式的体系の無矛盾性を有限的,構成的なしかたで証明することが数学の基礎づけの根本問題であるとしてそのプログラムを提出した。

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世界大百科事典内の形式主義の言及

【数学基礎論】より

…この意味で,その立場はしばしば半直観主義とも呼ばれる。 形式主義の立場に立つ公理主義者D.ヒルベルトは楽観的な態度をとり続け,数学は何らかのくふうにより,〈そのままの形〉で救えるものと考えた。1920年代後半,彼は数学(例えば解析学)を記号論理の中で形式化して得られる公理的体系を考え,その体系の無矛盾性の証明を有限の立場で行うという基本的プログラム(ヒルベルトの計画という)を提出,みずからもP.ベルナイスの協力を得つつその実行を試みた。…

【数理哲学】より

…これは数学を広義の直観に帰着せしめようとする。第3は形式主義である。形式主義は哲学よりもむしろ数学と直結した数理哲学であって,数学者はほとんどこの形式主義にくみする。…

※「形式主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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