フーシ派(読み)ふーしは

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フーシ派」の意味・わかりやすい解説

フーシ派
ふーしは

イエメン北部を拠点に活動するイスラム教シーア派の分派の一つであるザイド派の武装組織で、主体はフーシ部族。ホーシー派、フス派などともよばれる。

 ザイド派の宗教・政治指導者であるフセイン・バドルッディーン・フーシHussein Badreddin al-Houthi(1959―2004)は、1990年に南北イエメンが統一されると地域政党ハック党を結成し、イエメンの大統領サレハAli Abdullah Saleh(1942―2017)に対抗したが、抗議活動は弾圧され、2004年に暗殺された。これ以降、フーシ派はイエメン政府に対抗する武装民兵として知られるようになった。また、サレハ時代からイエメン政府は、フーシはシーア派系であるため、その背後にはイランがいると非難してきた。2011年にサレハが大統領職の退任に同意し、翌年、副大統領のハディAbdrabbuh Mansur Hadi(1945― )が暫定政権を率いると、フーシ派は仇敵(きゅうてき)の元大統領サレハと反政権勢力として共闘したが、最終的には対立し、2017年12月にサレハを殺害した。その間、2015年にフーシ派はクーデターで首都サヌアおよび紅海の要港ホデイダを支配下に置き、2012年の大統領選挙で大統領に就任していたハディはサヌアを脱出し、旧南イエメンのアデンに移ったものの、その直後にサウジアラビアに脱出した。この後、ハディ暫定政権を支えるという名目で、サウジアラビアを主体とするアラブ連合軍がイエメンに軍事介入を行った。

 フーシ派は、2017年ころからミサイルドローンを使い、サウジアラビアの首都リヤドやサウジアラビア国営石油会社(サウジアラムコ)の石油施設などを長距離攻撃するようになり、2019年9月には、サウジアラビア東部のアブカイククライスの石油施設に対して無人機による大規模な攻撃を行った。2021年1月にアメリカのトランプ政権はフーシ派をテロ組織に指定したが、和平協議や人道支援活動へ悪影響を与える可能性を考え、同年2月にはバイデン政権が解除を決定した。

[吉田雄介 2021年11月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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