ブラウン(Sir Thomas Browne、医師、文人)(読み)ぶらうん(英語表記)Sir Thomas Browne

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ブラウン(Sir Thomas Browne、医師、文人)
ぶらうん
Sir Thomas Browne
(1605―1682)

イギリスの医師文人。ロンドンに生まれ、オックスフォード大学卒業ののち、フランス、イタリア、ドイツの各大学で医学を修める。ヨークシャーで開業後1637年ノリッジへ移る。1671年、医者としての功績でサーの称号を授けられる。旺盛(おうせい)な知識欲と希有(けう)な記憶力の持ち主で、医業のかたわら著述にも励み、『医師の信仰』(1643)など数編の著書がある。『医師の信仰』は信仰と理性の問題を扱い、科学の支配に抗して宗教擁護の立場をとる代表的著作。一般に『迷信論』の名で知られる『伝染性謬見(びゅうけん)』(1646)は、古今の俗間信仰を科学的に、あるいは詭弁(きべん)を弄(ろう)しつつ、博識を駆使して縦横に批判する。偶然発見された骨壺(こつつぼ)をめぐり独自の死生観、霊魂不滅論を展開する『壺葬論』(1658)も、ユニークな主題で注目に価する。しかし、彼の真骨頂は主題の独自性よりも優れた散文スタイルにあり、形而上(けいじじょう)詩に一脈通ずる大胆な措辞は、近年改めて高い評価を受けつつある。

玉泉八州男

『堀大司訳『医師の信仰』(『世界人生論全集4』所収・1963・筑摩書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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