改訂新版 世界大百科事典 「ブルワーリットン」の意味・わかりやすい解説
ブルワー・リットン
Edward George Earle Bulwer-Lytton,1st Baron Lytton
生没年:1803-73
イギリスの小説家,政治家。本来の姓はブルワーであったが,母方の財産を継いでその家名リットンを加えた。またリットン卿と呼ばれるのは,政治家として貴族(男爵)に列せられたためである。上流の出身で,ケンブリッジ大学卒業後社交界に出入りし,やがて政治家,小説家として華やかにデビューした。作品は多く,社交界小説,政治小説,犯罪小説,怪奇小説,未来小説など多様であり,深さや芸術性には欠けるものの,時代の好みや風潮を巧みにとらえて広い読者に迎えられた。社交界の上流青年の恋と政治の遍歴物語《ペラム》(1828),《アーネスト・マルトラバーズ》(1837),犯罪を社会問題とし,犯罪者を同情的に描く《ポール・クリフォード》(1830),《ユージン・アラム》(1832),ローマ時代の歴史小説《ポンペイ最後の日》(1834)などが有名である。日本でも《アーネスト・マルトラバーズ》(丹羽純一郎訳《花柳春話》1878)をはじめ,多くの作品が明治10年代に翻訳され,西洋小説翻訳史上,D.デフォーやJ.ベルヌらと並んで先駆をなした。
執筆者:海老根 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報