自己に関する情報の流れをコントロールする権利の保護.プライバシーは,米国で19世紀末に「ひとりで居させてもらいたい権利」として論じられて以来,長い論議を経て,今日ではより積極的な意味を持つまでに理解が深まっている.コンピュータと通信技術の発達に伴い,個人情報が漏洩する危険が生じ,個人情報の保護対策が必要となったが,その根拠となるのがプライバシー権である.1980年に経済協力開発機構(OECD: Organization for Economic Cooperation and Development)は,「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関するOECD理事会勧告」の中で,収集の制限,データ内容の原則など八つの原則を定め,これは各国の個人情報保護法の基礎となった.図書館における個人情報としては,利用者の氏名や住所,来館記録,利用記録などがあり,プライバシー保護については,日本では,1974(昭和49)年の東村山市立図書館設置条例の「利用者の秘密を守る義務」以来,対策がとられてきている.なお,伝統的プライバシー権では,私事性,秘匿性,非向知性が3要件と考えられてきたが,情報化社会の進展とともに,個人情報が本人の知らないところで不当に,不利益な使い方をされないよう関与する権利(自己情報コントロール権)に対する意識が高まり,これをプライバシー権に含める考え方がある.