プーリング(読み)ぷーりんぐ(その他表記)pooling

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プーリング」の意味・わかりやすい解説

プーリング
ぷーりんぐ
pooling

グローバル企業において、各グループ企業の日常的な資金管理を一元化することによって、全体の資金効率化を図るためのシステムの総称国際石油資本メジャー)での活用が嚆矢(こうし)とされている。そのシステムには、恣意(しい)的に集中化するものと、自動的に行うものがあり、後者の代表がゼロバランスターゲット・バランスとよばれるものである。

 国際的な大銀行によって提供されているシステムは、次のようになっている。まず、このサービスを受けるため、グループ企業各社はその銀行の各国支店に口座を開設する。ただし、そのうちの一つはグループ企業全体の「プール口座」となっている。その国際的な大銀行の決済ネットワークを通じて、あらかじめ定められた範囲より資金余剰がある口座からは資金を吸い上げ、資金不足にある口座には資金が貸し出される。

 こうして、グループ企業各社の資金はゼロ・バランスの場合はゼロ、ターゲット・バランスの場合は一定の範囲で平準化され、まずグループ企業内部で資金が融通され、有効活用されうる。さらに、プール口座に集約された資金に余裕がある場合は一括運用、不足がある場合は一元的な調達がなされるため、効率的である。

 銀行の提供するサービスを受けることによって、通常、本社財務部門のようなセンターがこのシステムを運用する。まず、当該銀行からは、プール口座と各口座の貸借に関する情報を受けるとともに、グループ企業内部では、各社から定期的に資金計画や資金繰りの報告を受けること、センターは資金移動や利息計算などに関する明細を各社に報告するといった内部報告システムを構築しなければならない。さらに、プール口座から各社に貸付をする際の与信枠の設定とその管理、各社との貸借に関する金利の設定と付利の実施を行う制度を構築しなければならない。

 なお、基本的な概念は同じであるが、銀行の提供するサービスに相違があり、グループ企業各社の口座とそれを集約した仮想上の「マスター・アカウント」とよばれる口座を設定し、これを通じてセンターが資金管理をするが、実際には口座間では資金を移動させることのないノーショナル・プーリングとよばれる手法もある。狭い意味では、むしろこちらをプーリングということもあるが、広くゼロ・バランス、ターゲット・バランスも含めて考えてよい。

[中條誠一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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