改訂新版 世界大百科事典 「ヘモクロマトージス」の意味・わかりやすい解説
ヘモクロマトージス
h(a)emochromatosis
鉄代謝の異常により,種々の臓器に大量の鉄沈着を生じる病気。1889年,ドイツの病理学者レックリングハウゼンFriedrich von Recklinghausen(1833-1910)によって名づけられた。一次性(遺伝性)のものと,二次性のもの(慢性貧血,肝硬変,過剰鉄摂取,輸血などによるもの)に分けられる。10対1で男性に多く,45歳以上で初めて症状が出ることが多い。これは,腸内での鉄の過剰吸収によって,余った鉄の沈着が長期間徐々に進行する結果であり,女性では,生理出血時の鉄喪失により発症が防がれているためである。鉄沈着による臓器障害は,肝臓,膵臓,脾臓,腎臓,消化管,内分泌腺,心筋,骨格筋,関節,骨髄と全身に及ぶが,糖尿病とその合併症が初めの症状となるものが多い。全身倦怠,口渇,体重減少などの症状に加えて,皮膚はメラニン色素沈着により青銅(ブロンズ)色を呈するため,この病気に対しブロンズ糖尿bronze diabetesという別名も使われたことがある。診断は,臨床所見と,肝生検によって肝細胞内の多量の鉄沈着を確認することにより行われる。デスフェラール注射投与後の尿中鉄の増加も診断上重要である。治療としては,蓄積鉄の除去を目的とした瀉血(しやけつ)が最も有効である。
執筆者:松崎 松平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報