治療の目的で血液を急速に採ること。古くから行われ,ガレノスの治療体系でも重要な位置を占めていた。しかし,盛んに行われたのは中世ヨーロッパで,スコラ医学者たちはこの方法を重んじ,治療の目的だけではなく,衛生上の目的で定期的に行った。ときには多量の血液の放出も行われ,〈吸血鬼療法vampirism〉ともいわれた。方法としては,陰圧を利用したり,ヒルなどの吸血動物が用いられた。19世紀になって,フランスの医師P.C.A.ルイが多くの病気に対し,瀉血が治療効果をもたないことを証明し,瀉血についての批判を行った。このような批判にもかかわらず,その後も赤血球数が著しく増加しすぎて血流障害の起こる多血症,著しい肺鬱血(うつけつ)や肺水腫などで静脈過流量を減らす必要のある場合などに瀉血が行われ,静脈から数十ml以上が採血され,また近年,輸血による副作用を予防する目的で,手術中に用いる血液を事前に採血(瀉血)して貯えておくことが広く行われている。以前は高血圧や尿毒症なども瀉血の対象とされた。しかし,現在では行われていない。なお,静脈系を拡張させる亜硝酸薬などは,血液を一時的に末梢静脈系にためて血液循環の心臓に対する負担を転減させる効果があり,薬理学的瀉血と呼ばれる。
執筆者:細田 瑳一
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治療の目的で、患者から血液を採取し、除去すること。心臓の負担を減らして循環の改善を図るとき、過剰な血液を除去するとき、あるいは種々の中毒を治療するときなどに施行される。以前はしばしば用いられた療法で、脳卒中、高血圧、尿毒症のときにも行われたが、最近は他の優れた治療法の発達のため、ほとんど使用されなくなってきている。しかし、現在でも心臓喘息(ぜんそく)、肺水腫(すいしゅ)、赤血球増加症、血色素沈着症などの際には、なお有効な治療法として試みられることもある。
方法は、通常50~100ミリリットルの滅菌消毒した注射器を用い、血液の凝固を防ぐために10%クエン酸ナトリウム溶液などで注射器を潤したのち、肘窩(ちゅうか)(肘(ひじ)の前側にあるくぼみ)の表在静脈より血液を採取し、除去する。採血量は一般には1回に200~400ミリリットルで、赤血球増加症では同量を数日にわたり除去する。また、血色素沈着症では週1回500ミリリットル程度を比較的長期間続ける方法がとられる。
[阿部 裕]
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…月経【池沢 康郎】
[未開社会]
動物の血は狩猟民や牧畜民のあいだではふつう重要な食料になっている。東アフリカのマサイ族では,青年戦士は特別の良質の食料だけをとって生活するが,それは牛乳,肉,それに雄牛の瀉血(しやけつ)(血を抜くこと)による血である。ユーラシア,アフリカ,オセアニアの農耕民が家畜を犠牲に供する場合,しばしば出血をともなうように屠殺する。…
…とくに中世のヨーロッパでは,大学出身の医者は手の技を卑しい仕事と考え外科的治療に携わらなかったので,床屋が外科医を兼ねることが定着した。また当時の修道士は,教会の規則で定期的に剃髪と瀉血(しやけつ)のために床屋に行くことが決められていた。こうして中世の末ごろまでに床屋医者あるいは理髪外科医barber‐surgeonといわれる職業が重要な存在となっていた。…
…30年パリ大学教授。胃腸カタルがあらゆる病気の根本原因になると考え,胃の病的状態を究明することが病理学の鍵だと主張し,食養生とヒルによる局部瀉血(しやけつ)を推奨した。【本田 一二】。…
…デスフェラール注射投与後の尿中鉄の増加も診断上重要である。治療としては,蓄積鉄の除去を目的とした瀉血(しやけつ)が最も有効である。【松崎 松平】。…
※「瀉血」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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