ヘレラサウルス(読み)へれらさうるす(英語表記)herrerasaur

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ヘレラサウルス
へれらさうるす
herrerasaur
[学] Herrerasaurus ischigualastensis

竜盤目ヘレラサウルス科Herrerasauridaeに属する恐竜。アルゼンチンの三畳紀後期、約2億2000万年前の地層から産出した全長約3メートルの肉食恐竜。属名は「ヘレラのトカゲ」という意味。「ヘレラ」というのは、最初に偶然この骨格を発見したアンデス地方の農夫ビクトリノ・ヘレラVictorino Herreraの名にちなんだものである。エオラプトルEoraptorと並んでもっとも初期の恐竜。原始的ながら、かなり特殊化した点もある。たとえば、後肢やその筋肉の付着する腸骨は原始的で古竜脚類に似る。脛骨(けいこつ)よりも大腿骨(だいたいこつ)が長く、足指は5本あった。腸骨の前方は広がっていないので、大腿部の筋肉量は少なかったであろう。骨端の特徴も未発達であった。仙椎(せんつい)は2個しかなかった。ところが恥骨(ちこつ)には進んだ点がみられる。恥骨の先端が大きく広がり、一部の獣脚類(ケラトサウルス類など)よりは進んでいて、ジュラ紀以後のテタヌラ類に似ている。下顎(かがく)の中ほどには可動部があって、獲物を食べるときにはあごが広がるつくりになっており、あごの関節が前後に動いて肉を引き裂くことができた点などはエオラプトルよりも進化していた。頭部が大きく頑丈で、あごの前部には、縁が鋸歯(きょし)状の大形の歯が並び、比較的大きな獲物を捕食していたらしい。前肢の機能指は3本であった。この時代には、草食恐竜が少数であったので、同じ地層から発見される獣弓類やリンコサウルス類など恐竜以外の爬虫(はちゅう)類が主要な獲物であったらしい。当時の捕食動物の主流は四肢歩行ないし半二肢歩行の主竜類(恐竜、翼竜、ワニ、ラゴスクス類などを含む上位の大きなグループ)であったから、直立した二肢歩行をするこの恐竜は、当時のもっとも進歩的で活発な捕食者であった。ヘレラサウルスがすんでいたのは、雨期には植物が生い茂るが長い乾期には枯れてしまうような高地であって、川岸の厚い植生を鳥のような足でまたぎ越え、獲物を探したり待ち伏せをしていたのであろう。若葉を食べる獲物に突進し、皮につめを立てたりかみついたりして深手を負わせたであろう。子は死体から腐肉を食べたと思われる。

[小畠郁生]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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