化学辞典 第2版 「ボイル温度」の解説
ボイル温度
ボイルオンド
Boyle temperature, Boyle point
実在気体の圧力Pと体積Vの積PVが,低圧において圧力に無関係になる温度.一般に,実在気体はボイルの法則(PVが圧力に無関係に一定)に従わず,室温で測定されたPVは圧力の増加とともに最初減少し,ついで極小を経たのち増加に転じる.ただし,H2 とHeだけは例外で,PVは最初から圧力とともに増加する.このPV-P曲線の形は温度とともにかわり,温度が高くなるに従って,谷の深さは浅くなり,極小を示す圧力は低圧のほうに移動する.極小値を示す圧力が0になるときの温度,すなわちPV-P曲線が低圧で水平になるときの温度,換言すれば低圧でボイルの法則が成り立つときの温度がボイル温度である.一般に,液化しやすい気体ほどボイル温度は高く室温以上であり,H2 やHeのような液化しにくいものでは低く,それぞれ-165 ℃ と-240 ℃ である.実在気体に関するファンデルワールスの状態式が正しいものと仮定すれば,ボイル温度 TB は理論的に
TB = a/(Rb),
(a,bはファンデルワールス定数)となり,ジュール-トムソン効果における逆転温度の1/2となる.H2 とHeのボイル温度がいちじるしく低いのは,ほかの気体に比べて,分子間力が小さく,aが小さいためである.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報