マアト(英語表記)Maat

改訂新版 世界大百科事典 「マアト」の意味・わかりやすい解説

マアト
Maat

古代エジプト人が〈創造神によって最初に定められた宇宙の秩序〉を指した言葉。エジプト人の世界観の基本概念をなす。〈秩序〉のほか,時に応じて〈正義〉〈公正〉〈真理〉〈真実〉〈善〉とも訳される。創造神である太陽神ラーの娘とされ,頭上にマアトを意味する羽根を頂く女性として表現される。ファラオ(王)の役割はマアトを維持・更新することにより人間社会の繁栄安寧を確保することにあるとされ,マアト女神像を神に奉納する主題神殿壁面に好んで表現された。〈死者の書〉の〈死者の裁判〉の挿絵では,マアトの羽根と死者の心臓とが天秤にかけられ,生前の行為が審判された。
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百科事典マイペディア 「マアト」の意味・わかりやすい解説

マアト

古代エジプトの〈秩序〉観を規定する基本概念。〈正義〉〈公正〉〈善〉〈真理〉の意でも用いられる。擬人化されて創造神・太陽神ラーの娘とされ,頭に羽根を戴く姿で表される。
→関連項目ファラオ

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世界大百科事典(旧版)内のマアトの言及

【ファラオ】より

…ファラオを〈神聖王権〉の典型とみる見解は,民族学者J.G.フレーザーの提唱以来支持者も多いが,近年では反論も活発である。例えばエジプト学者ホルヌングE.Hornungは,ファラオは歴史の舞台において主役である創造神(太陽神)を〈演じる〉ことにより,天地創造時に創造神が定めた秩序(マアト)を維持するがゆえに〈神とみなされる〉にすぎないとみる。ファラオ個人の人格よりもその果たす役割が重視されたのである。…

※「マアト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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