公正(読み)コウセイ

デジタル大辞泉の解説

こう‐せい【公正】

[名・形動]公平で偏っていないこと。また、そのさま。「公正を期す」「公正な取引」「公正な判断」
公平用法
[派生]こうせいさ[名]

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大辞林 第三版の解説

こうせい【公正】

( 名 ・形動 ) [文] ナリ 
かたよりなく平等であること。公平で正しいこと。また、そのさま。 「 -な裁決」 「 -な取引」 「 -を期する」
[派生] -さ ( 名 )

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精選版 日本国語大辞典の解説

こう‐せい【公正】

〘名〙 (形動) 公平でかたよっていないこと。明白で正しいこと。また、そのさま。
※続日本紀‐天平宝字二年(758)八月庚子「弃親挙踈、心在公正」 〔韓非子‐外儲右下〕

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最新 心理学事典の解説

こうせい
公正
justice,fairness

公正とは社会的決定に関する評価の一つで,とりわけ権力のある者が他者の処遇(利益やコストの分配,権限や機会の付与など)にかかわる決定をする際に問題とされる。後述するように,公正の基準は多様であるが,一般的には関係者をその資格条件deservednessにふさわしい処遇をすることと定義される(大渕憲一,2004)。哲学においては公正の本質を巡る議論が行なわれ,法学,経済学など他の社会科学では公正を実現する社会制度・政策のあり方が検討されてきた。これに対して心理学では,一般の人びとが何をもって公正とみなすか,また公正あるいは不公正を知覚したとき人がこれにどう反応するかなど,主観的公正研究が進められてきた。なお,心理学では公正と正義justiceは同義なものとして扱われている。

【分配的公正distributive justice】 社会的決定の一つの評価軸はその結果に注目するもので,これは分配的公正とよばれる。アダムスAdams,J.S.(1965)は「自己の報酬-自己の貢献」と「他者の報酬-他者の貢献」が釣り合っている状態を衡平equityと定義し,これを分配的公正の基準とした。彼の衡平理論では,不衡平を知覚すると人びとは不快を経験し,それは衡平状態を回復するよう人びとを動機づけるとされ,認知,感情,行動レベルの連動性が仮定された。たとえば,同じ仕事量をしているのに同僚よりも給与が少ないと知覚した従業員は,この状態を不快に思い,給与を上げるよう上司に要求するか,さもなくば仕事量を減らすことによって衡平を回復しようとするであろう。アダムスはたとえ得をしている人であっても,それが不公正なものであると知覚すると満足感は低く,その事態の改善を図るであろうと予測したが,実証研究は,不当に高い報酬を与えられた従業員がその報酬に見合うよう仕事量を増やすなどして不衡平を是正しようとすること示してきた(Tyler,T.R.et al.,1997,2000)。

 ドイッチュDeutsch,M.(1975)は,衡平以外にも公正基準とされるものがあると指摘し,平等equalityと必要性needを挙げた。前者は関係者で等しく利益を分配すること,後者は特別な支援を必要とする人(子ども,老人,障害者など)に多くの利益を分配することである。これらは何を資格条件とするかの違いによるもので,衡平分配が貢献度や業績を資格条件とするのに対して,平等分配では集団成員性が,また必要性分配では困窮度が利益分配の資格条件として用いられる(表)。実社会の利益分配システムは,これらの基準を組み合わせたハイブリッド型であることが多い。たとえば,多くの会社では同期入社の従業員に同額の基本給を与える一方(平等分配),業績の良い社員には給与を上乗せする勤勉手当を支給している(衡平分配)。さらに,扶養家族を抱えて家計の苦しい従業員には扶養手当を支給するという会社も少なくない(必要性分配)。

 ドイッチュは,その社会的関係説において,ある集団がどの公正基準を用いて成員に利益分配するかは,その集団目標に依存すると論じた。衡平は集団成員間の競争を促すので,生産性を高めるという目標に適合した基準である。一方,平等基準のもとでは集団成員であることによって利益が得られるので,人びとは集団所属を優先して対立や反目を回避しようとする。それゆえ,これは社会的調和という目標に資すると考えられる。子どもの教育,あるいは障害者や老人の支援など,弱者保護を重視する集団では必要性基準による利益分配が行なわれる。福祉・教育行政に対する国の予算配分,あるいは先に挙げた扶養手当などはこうした考えに基づくものである。

 分配的公正の研究は従業員の職務満足感の研究として発展し,それが給与や待遇の良さといった自己利益量だけでなく,自分が公正に扱われているかどうかという公正知覚によって影響されることを示した。その後,公正研究は一般の人間関係にも拡大され,これを資源交換の場とみなす研究者たちは,公正知覚が関係満足感を規定することを指摘した(Rusbult,C.et al.,2006;Walster,E.et al.,1978)。フィスクFiske,A.P.ら(2005)やクラークClark,M.S.(2010)は人間関係のタイプによって公正基準が異なるとし,ビジネス関係では衡平が,友人関係では平等が,そして恋人や家族など親密な関係では必要性が交換規範として働いていると論じた。

【手続き的公正procedural justice】 社会的決定に対してそのプロセスの適否から評価を行なうものが手続き的公正である。心理学における手続き的公正の本格的な研究は,チボーThibaut,J.W.とウォーカーWalker,L.(1975)が裁判制度の比較を実験的手法を用いて行なったのが最初である。裁判当事者の満足感は主として結果によって規定されるが,同時に,審理過程を適正と評価した者は勝っても負けても比較的満足感が高かった。チボーとウォーカーは,大陸型の糾問主義制度よりも英米型の当事者主義制度で裁判を受けた当事者たちの間で公正知覚が高いことを見いだしたが,それをコントロール・モデルcontrol modelを用いて説明した(図)。裁判の場で判決(決定)を下すのは裁判官(決定者)であって,当事者には決定権はない。しかし,審理の過程で主張を行なうことによって裁判官の決定に影響を与えることはできる。この間接的な影響力は過程コントロールとよばれ,これが十分に保証されていることが手続き的公正知覚を高めると考えられた。このモデルは,学校での教師による生徒の評価,職場での上司による部下の評価など,裁判以外の社会的決定にも広く適用可能で,実証研究において広範囲の支持を得てきた(Tyler,T.R.et al.,1997,2000)。

 実質的には影響力がないことがわかっていても,決定者に対して意見を言う機会があると手続き的公正感が高まるという発言効果voice effectに注目し,これを理論的に発展させてリンドLind,A.E.とタイラーTyler,T.R.(1988,1995)は手続き的公正の関係モデルを提起した。これはコントロールが与えられるかどうかとは別に,決定にあたって決定者が示す態度を評価するものである。リンドとタイラーは中立性(立場に偏りがないこと),尊重(当事者を尊重し,ていねいに扱うこと),信頼性(専門的技量に優れ,熱心に問題に取り組んでいること)の3種類の関係要因を挙げたが,教育,職場,裁判,政治などさまざまの分野で行なわれた実証研究によって,これらが手続き的公正知覚を高めることが確認されてきた(Tyler,et al.,1997,2000)。コントロールへの関心は自己利益の最大化をめざす合理的動機によって生み出されるものだが,関係要因の場合は,集団成員としての地位の確認や自集団価値の高揚など社会的アイデンティティ関心が背後にあると考えられる。 →組織倫理
〔大渕 憲一〕

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