マザーグースの歌(読み)まざーぐーすのうた(英語表記)Mother Goose's rhymes (songs melodies)

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

マザーグースの歌
まざーぐーすのうた
Mother Goose's rhymes (songs, melodies)

イギリス、アメリカに古くから口誦(こうしょう)によって伝承されてきた数々の童謡のこと。最近では「マザーグース」だけでそれらの総称や集成のタイトルとして使われることが多い。子守歌、遊戯歌、物語歌、暗記歌、呪文(じゅもん)、物売り口上、なぞなぞ、早口言葉、悪口歌、歳事歌、ナンセンス歌、残酷な歌など簡単に分類できないほどさまざまな歌が含まれている。これらを集成したものとしては、メアリー・クーパーMary Cooper (?―1761)が1744年にロンドンで出版した『Tommy Thumb's Pretty Song Book Vol.』が最初である。しかし、伝承童謡が「マザーグース」と結び付くようになったのは、T・カーナンThomas Carnan(1737―1788)がやはりロンドンで出版した『Mother Goose's Melody』(1780)に始まっている。イギリス人やアメリカ人は乳幼児のころから繰り返し繰り返し聞かされ、すこし大きくなっては何百回となく歌い興じたので、マザーグースの歌は彼らの言語感覚や生活感覚の基盤に根を下ろしてしまっている。歌の主人公や詞句が、そのまま、あるいはもじって、新聞、雑誌、小説、漫画、ラジオ、テレビ、映画、ポピュラーソング、広告などに引用されるわけである。それゆえに、マザーグースの歌に関する知識は、英語を、ひいてはイギリス人やアメリカ人を理解するうえできわめてたいせつなものであるといえる。それらのなかでは
  おやすみ 赤ちゃん
          木の上で
  風が吹いたら
       揺りかご揺れる
  枝が折れたら
       揺りかご落ちる
  揺りかごごとに
       赤ちゃん落ちる
が眠らせ歌の、
  ヘイ ディドゥル
         ディドゥル
  バイオリンを
        ネコが弾きゃ
  牝(め)ウシは月を
         飛び越えた
  小犬がこれ見て大笑い
  お皿はおさじと
       駆(か)け落ちだ
がナンセンス歌の代表である。
 日本ではマザーグースは北原白秋(はくしゅう)の『まざあ・ぐうす』(1921)によって初めてまとまった形で紹介され、谷川俊太郎の『マザー・グース』(1981~1982)をはじめ多くの人によって訳されてきた。しかし、本邦初訳といえるのはアンニー・L・ハウAnnie Lyon Howe(1852―1943)による『幼稚園唱歌』(1892)に収められている「きらきら」と「我小猫を愛す」の2編である。[藤野紀男]
『平野敬一著『マザー・グースの唄』(中公新書) ▽平野敬一著『マザー・グースの世界――伝承童謡の周辺』(1974・英語教育協議会・エレック選書) ▽藤野紀男著『マザーグース案内』(1987・大修館書店) ▽藤野紀男著『名作マザーグース70選』(1989・三友社出版)』

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