一つ二つと数を追っていく形式の歌で,わらべ歌や流行歌(はやりうた)の中に多く見られる。数の連続を競う〈手毬(てまり)歌〉〈お手玉歌〉〈羽子突(はねつき)歌〉のように数量や順序を計算する意味と,津軽民謡《弥三郎節》のように嫁いびりの事例をいちいち列挙する意味の2義が〈数える〉には含まれる。もともと数え詞は招魂法,降神術などによみあげる一種の呪言(まじない)であり,たとえば鎮魂(ちんこん)祭では,〈一(ひと)二(ふた)三(み)四(よ)五(いつ)六(むゆ)七(なな)八(や)九(ここの)十(たりや)〉の数を10回唱える。この呪言数詞から,やがて民間療法としての〈まじない歌〉や子どもの〈数え歌〉が出てくると考えられる。平安時代にはまだ〈一つとや〉式の数え歌はないが,後世の列挙法の源泉ともいうべき〈物は尽くし〉的な修辞法や,〈道行(みちゆき)ぶり〉と称する地名を列挙する歌唱法があり,中世の〈宴曲〉(早歌(そうが))の内容に取り入れられている。頭韻法による数え歌の古例は,〈一(ひとつ)とや,ひとりまろ寝の草枕袂(たもと)しぼらぬ暁もなし〉などの室町末期の御伽(おとぎ)草子《和泉式部》所載のもの。次に同じく御伽草子《梅津の長者》および《大悦(だいえつ)物語》等に見える大黒舞が有名である。これは早くに門付(かどづけ)芸となり,近世には〈昔大黒舞〉と称する酒席の座敷歌ともなった。近世は若衆歌舞伎の〈数え踊〉や〈江戸万歳〉〈西国巡礼歌〉等,数え歌形式のものが盛行。
執筆者:浅野 建二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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