マリニズモ(読み)まりにずも(英語表記)marinismo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリニズモ」の意味・わかりやすい解説

マリニズモ
まりにずも
marinismo

17世紀のイタリアで用いられた詩法。西欧バロック期に一世を風靡(ふうび)したイタリアの詩人マリーノによって始められ、その絶大な影響力のもとに大流行した。ルネサンス文化が生命力を失った時代に、その典雅均整を理想とする古典主義からの脱皮を図るため、マリーノとその追随者たちは、詩の目的は読者を驚かすことにありとする驚異の詩学を唱え、その手段を修辞に求めて、奇想天外な隠喩(いんゆ)の発見に没頭した。そのために「奇想主義」ともよばれるこの詩法は、技巧に走って内容空疎な単なることば遊びに堕する場合が多く、歴史的にも、「マリーノ主義」の謂(いい)であるこの呼称は17世紀イタリア文学の退廃的傾向をさすものとして、長らく否定的に用いられてきた。とはいえ、保守化した古典主義と決別して新しい詩的言語を知的に探求したという側面は否定することができず、20世紀に入ってからは、バロック復権の潮流のなかで、評価の見直しが行われている。

[林 和宏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マリニズモ」の意味・わかりやすい解説

マリニズモ
marinismo

17世紀イタリアの文学主潮。詩人マリーノに由来する。人間中心のルネサンス文芸に対抗して,繊細華麗な技法を重んじるが,しばしば難解で奇嬌な様相を帯びるにいたった。広くはバロック文学一環に組込まれる。

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世界大百科事典(旧版)内のマリニズモの言及

【マリーノ】より

…作品には《竪琴》(1614),《風笛》(1620)をはじめとする多数の詩集と,ギリシア神話から題材をとった長編叙事詩《アドニス》20歌(1623)があるが,総じて,読者の想像力を刺激するべく駆使された奇抜な隠喩と凝った文体に特徴があり,感情よりも感覚が重視された。そしてこれは16世紀の文学規範であったペトラルカ模倣に代わる新しい様式の誕生を告げるものであり,マリニズモMarinismoの名で17世紀イタリア文学の主流をなした。【林 和宏】。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」