モンク(Meredith Monk)(読み)もんく(英語表記)Meredith Monk

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

モンク(Meredith Monk)
もんく
Meredith Monk
(1943― )

ペルー生まれのアメリカの歌手、作曲家、パフォーマー。リマで生まれる。母親、祖父も歌手で、祖母はコンサート・ピアニストという環境で4歳から音楽の勉強を始める。子供のころはニューヨークに住み、その後コネティカット州に移る。13~14歳のころから声楽のレッスンを始める。ペンシルベニア州のジョージ・スクールで音楽理論や作曲を学んだのち、ニューヨークのサラ・ローレンス大学で「総合上演芸術プログラム」を専攻。中学・高校ではフォーク・ミュージックを歌い、その後はロック・バンドでも歌っていたことがある。

 モンクは1964年以来、マンハッタンのダウンタウンを根拠地として活動する。ジョイス劇場(ニューヨーク)では劇作家のピン・チョンPing Chong(1946― )と「紀行シリーズ」(1972~76)を発表。ホイットニー・アメリカ美術館ではビデオによる回顧展でサウンド・インスタレーション『シルバー・レーク・ウィズ・ドルメン・ミュージック』を展示(1981)。ミュージシャンのデビッド・バーンDavid Byrne(1952― )監督の映画『トゥルー・ストーリーズ』(1986)の音楽と振付けを担当。また、ボブ・ローゼンBob Rosenとアンドレア・シモンAndrea Simonのフィルムファイユーム肖像』(1988)に音楽をつけ、ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックにおける「ネクスト・ウェーブ・フェスティバル」では『デュエット・ビヘイビア』『リンギング・プレイズ』(ともに1987)を上演。さらに88年タウン・ホールでピアニストのヌリット・ティルズNurit Tillesとともに、歌とピアノのデュオ・コンサートを開いている。また、アメリカン・シアター・フェスティバルのための作品や、ヒューストン・グランド・オペラなど、多数の発表作品がある。

 彼女は歌、振付け、作曲と多くのことを1人でこなす。映画でも独立した作品として脚本を書き、作曲をするとともに、監督も行う。チョンとの共同制作の映画『エリス島』(1981)、ビデオ作品『パリ』(1982)はそれぞれ、いくつかの賞を受けるとともにPBS(公共放送網)で全国に放送された。また、映画『ブック・オブ・デイズ』Book of Days(1988)はPBSとヨーロッパのテレビでも放送された。

 モンクは透明な美しさを備えるソプラノ発声とともに、ささやき声、うめき声、声門閉鎖音、サイレンのような叫び声、倍音、その他多様な声をもつ。彼女は、書き終えた楽譜を演奏するのではなく、画家や振付け師のようにモチーフを用意し、そのモチーフを何度も繰り返し歌い、そのなかで膨らませて、作品を制作してゆく。彼女の音楽は、ポピュラー音楽や民族音楽に深く根ざしており、また、そのなかには女性独特のウィットやユーモアがみられる。多様な才能をもつ彼女は、現代の音楽界でも特異な存在であるが、世界中に多くのファンをもつ。単に1人のボイス・パフォーマーにとどまることなく、その発声やプロジェクトを集団的に実現できる才能ももち合わせている。

 受賞歴も多く、ブランダイス創造芸術賞、『オペラ エピック 聖人』(1971)、『オペラ 石切り場』(1976)および継続的な業績に対してオービー賞、ベッシー賞、『オペラ 近代の廃墟』(1979)と『キャバレー、亀の夢』(1984)に対するビレンジャー賞、ASCAP賞、アルバム『ドルメン・ミュージック』(1981)と『近頃の婦人、バンガード・テープ』(1986)に対するドイツ批評家ベスト・レコード賞などを受賞。

[小沼純一]

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