日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨアキム」の意味・わかりやすい解説
ヨアキム
よあきむ
Joachim (Gioacchino) da Fiore
(1132?―1202)
イタリアの神学者、神秘主義者。南イタリアのチェリコの町に生まれる。公証人であった父の意向でシチリア島パレルモのウィルヘルム2世の宮廷に出仕し(その時期は1156/1157年、1166/1167年の二説がある)、その後ほどなく聖地巡礼し、このときの体験で帰国後遁世(とんせい)し、シトー派修道院サンブキナに入った。1年後コラッツォー修道院に移り、やがて意に反して修道院長に選ばれた。このころ「詩篇(しへん)」の注釈に筆を染めるが、1184年には教皇ルキウス3世から『黙示録釈義』と『新旧約一致の書』の執筆許可を得た。瞑想(めいそう)と著述の地を求めて1189年フィオーレに居を移す。1193年ころシトー会を離れ、独自のフィオーレ修道会を設立。その予言能力は生前から聞こえ、リチャード1世(獅子(しし)心王)には十字軍の見込みを問われたが、彼の独特な終末論的歴史観は同時代にも後代にも甚大な影響を与え、とくにフランシスコ会にその精神的後裔(こうえい)が多かった。
[今野國雄]