改訂新版 世界大百科事典 「ルジャンドル関数」の意味・わかりやすい解説
ルジャンドル関数 (ルジャンドルかんすう)
Legendre function
nを0または正の整数とするとき,2階の線形微分方程式,
をルジャンドルの微分方程式といい,その解を一般にn次のルジャンドル関数という。また,mを正の整数とするとき,(1)を拡張して得られる常微分方程式,
をルジャンドルの陪微分方程式といい,その解をルジャンドルの陪関数という(上の各微分方程式およびそれぞれの解となる関数は,nとmを任意の複素数としても定義されているが,本項目では,nとmは整数でn≧0,m>0として述べる)。微分方程式(1)は下記のn次多項式Pn(x)および|x|>1で収束する無限級数Qn(x)の形の解をもつ。
Pn(x)をルジャンドルの多項式または第1種のルジャンドル関数といい,Qn(x)を第2種のルジャンドル関数という。微分方程式(2)は,Pn(x),Qn(x)に対応して,
なる解をもつ。これらをそれぞれ第1種,第2種のルジャンドルの陪関数という。任意のmに対して{Pnm(n≧m)}には直交関係,
がある。ここで形式的にm=0とおいて得られる{Pn(n≧0)}の直交関係も成立する。応用例としては,例えば三次元ラプラス方程式⊿U=0を,極座標(γ,θ,φ)により,
U=u(γ)v(θ)w(φ) ……(3)
と変数分離して解くと,u=γn,γ⁻n⁻1;v=Pnm(cosθ),Pnm(sinθ);w=cosmφ,sinmφとなる。ここでu,v,wの各二通りの関数からどのように選んで(3)の積を作っても,ラプラス方程式の解Uを得る。このように,ルジャンドル関数は,ポテンシャル,拡散,波動,量子力学などの問題を極座標を使って扱うとき,球面上の座標θに関する因子として現れるので,球関数とも呼ばれ,ベッセル関数と並んで数理物理学上重要な関数である。
執筆者:伊藤 清三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報