日本大百科全書(ニッポニカ) 「レッド・ツェッペリン」の意味・わかりやすい解説
レッド・ツェッペリン
れっどつぇっぺりん
Led Zeppelin
イギリスのロック・バンド。1970年代以降のハード・ロック、さらにヘビー・メタルの雛型をつくったが、同時にイギリスをはじめさまざまな地域の伝統音楽、民族音楽の要素をロックに導入したり、生楽器をふんだんに用いた大胆なアレンジを探求するなど、ロック・ミュージックの表現の枠を大きく広げた実験バンドとしても重要である。
結成されたのは1968年。メンバーはジミー・ページJimmy Page(1944― 、ギター)、ロバート・プラントRobert Plant(1948― 、ボーカル)、ジョン・ポール・ジョーンズJohn-Paul Jones(1946― 、ベース、キーボード)、ジョン・ボーナムJohn Bonham(1944―79、ドラム)の4人で、ボーナムの死によるバンド解散まで、同じメンバーで続けられた。
元々セッション・ギタリストとして活躍していたページは、60年代ブリティッシュ・ブルース・ロックの代表的バンド、ヤードバーズに、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックに続く3代目ギタリストとして迎えられたが、そこでの活動に限界を感じ、メンバーを一新したニュー・ヤードバーズを構想、それがそのままレッド・ツェッペリンへと名前を変えた。アメリカのレーベル、アトランティックと契約し、69年にデビュー・アルバム『レッド・ツェッペリン』を発表。同年に出た2作目『レッド・ツェッペリンⅡ』は、全英チャートで1位に輝き、アメリカだけで300万枚のセールスを記録。ページのヘビーで複雑なリフ(反復楽節)重視のギターとボーナムの爆音のようなドラミング、そしてプラントの金属的ハイトーンを生かした絶叫ボーカル等々、いくつもの個性を際立たせたレッド・ツェッペリンは、このアルバムでブルースをベースにした新しいハード・ロック像を一気に打ち立ててセンセーションを巻き起こした。
しかし、彼らはただのハード・ロック/ヘビー・メタルの枠内には収まらなかった。70年にリリースされた3作目『レッド・ツェッペリンⅢ』では、デビュー作でもかいま見せたアコースティック・アンサンブルをさらに追求し、その後も、イギリスのトラッド・フォーク、カントリー、レゲエ、ファンク、インド音楽、アラブ音楽、サンバといったさまざまなエスニック・エレメントを導入しつつ、他に類をみないフュージョン・ミュージックを次々とつくり出していった。71年に出た4作目『レッド・ツェッペリンⅣ』に収録された「天国への階段」は、70年代ロックのスタンダード・ナンバーとして、またツェッペリン・サウンドの多様性を象徴する名曲として知られている。
ボーナムの急死によって、オリジナル・アルバムとしては79年に出た8作目『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』(76年に出たライブ盤『永遠の詩(熱狂のライヴ)』は含まず)を最後に、バンドは解散。その後82年には未発表曲を集めた『コーダ(最終楽章)』も出た。残った3人は各々、ソロ・アルバムを発表したり、セッション活動を続けている。特にページとプラントは90年代以降は再び共演することが多く、デュオ名義での作品もあるが、そこでは、ツェッペリン時代のエスニックなエレメントを使った実験をさらに推し進めた音づくりに挑んだ。
ハード・ロックの極点に突き進みながら、同時に、ハード・ロックの枠組みから逃れようとする欲望と常に対峙していたパラドキシカルなバンド、それがレッド・ツェッペリンだった。
[松山晋也]