一事両様(読み)いちじりょうよう

精選版 日本国語大辞典 「一事両様」の意味・読み・例文・類語

いちじ‐りょうよう ‥リャウヤウ【一事両様】

〘名〙
一つの事を二様に見たり、言ったりすること。同じ事柄に対して、時と場合によって違った態度をとること。
※公名公記‐嘉吉元年(1441)閏九月二〇日「山門売得地在所々可一山滅亡之由、致訴訟、依是去十八日先被壁書之由有沙汰、一事両様為之如何」
咄本醒睡笑(1628)一「そなたは、我に〈略〉いへというておいて、今はまたさういはぬとは、一事両様なる事を」
中世訴訟法において、事実と関係者の申し立てとの間に相違があること。
沙汰未練書(14C初)「一事両様とは事与詞違目也」
③ 中世の訴訟法において、すでに裁判所に訴えた事案をはじめて訴えるように訴訟すること。
※島津伊作家文書‐元徳二年(1330)一二月二〇日・鎮西下知状「而下地相論未断之処、澄円又嘉暦元年、致押領物訴訟之条、一事両様之奸訴、難其咎歟」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「一事両様」の意味・読み・例文・類語

いちじ‐りょうよう〔‐リヤウヤウ〕【一事両様】

一つの事を二通りに見たり、言ったりすること。二枚舌
「今はまたさういはぬとは、―なる事を」〈咄・醒睡笑・一〉
鎌倉幕府の訴訟上の用語。訴えの係属中に同じ訴人が同じ訴えを別に提起すること。幕府はこれを禁じた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の一事両様の言及

【庭中】より

…庭中では原判決の記録を用意し,担当奉行と訴論人を召喚して対決させたようである。内容的には,提訴したのに奉行が手続を進行させず20日以上を経過した,相手方が一事両様の訴(同一案件の二重訴訟)を提起した,当事者にあてるべき召文を最初から使節あてにした,などの事例があるが,庭中は関東では口頭だから,もともと史料の残る可能性が少なく,不明の点が多い。 室町幕府の場合は庭中方が設けられ,庭中方管領が責任者である。…

※「一事両様」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android