三勝物(読み)さんかつもの

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三勝物」の意味・わかりやすい解説

三勝物
さんかつもの

歌舞伎劇,浄瑠璃劇,三味線音楽の曲の一系統。元禄8 (1695) 年 12月に大坂長町の美濃屋の養女三勝と大和国五条の赤根屋半七とが大坂郊外難波村で心中した事件を脚色した曲の総称。三勝半七物ともいう。 (1) 歌舞伎『茜の色揚 (あかねのいろあげ) 』 元禄8年 12月,大坂岩井半四郎座初演。 150日の大当り。 (2) 祇園踊口説『三勝心中あかつきの霜』 元禄9 (96) 年初演。 (3) 歌舞伎『唐崎八景屏風』の第2『心中半七三勝七年忌』劇中劇 人物名と趣向は三勝半七であるが,内容は同趣向の別な心中事件,おしゅんと庄兵衛の米屋心中から取材。近松門左衛門作。元禄 16 (1703) 年,京の早雲座初演。 (4) 都音頭『三勝心中』 宝永1 (04) 年刊の『落葉集』所載。 (5) 歌祭文『三勝心中』 元禄~宝永年間頃成立。 (6) 京坂の遊里歌『三勝自然居士道行』 元禄~享保年間頃成立。 (7) 義太夫節『笠屋三勝二十五年忌』 紀海音作。享保1 (16) 年,大坂豊竹座初演。 (8) 歌舞伎『半七三かつ心中』 享保1年,江戸中村座初演。 (9) 一中節『あかねや半七かさや三かつ心中下巻』 別称『笠屋三勝下の巻』。元文~寛保年間頃出版の『都羽二重拍子扇』所収。 (10) 一中節『半七三勝心中道行』 同上。 (11) 歌舞伎『五十年忌血汐茜染三勝二世つまむすび』 並木笛風,中田万助,沢村文次の合作。元文5 (40) 年,大坂芳沢あやめ座初演。道行の場面は京太夫和泉の語りによる『道行涙朝霜』。 (12) 義太夫節『浮名茜染五十年忌女舞剣紅楓』 (7) の改作。春草堂作。延享3 (46) 年,大坂道頓堀の陸竹小和泉座初演。 (13) 長唄『三勝半七浮名の雨』 通称『三勝道行』。 杵屋作十郎作曲。3種の心中劇を組合せた『三傘暁小袖 (みつからかさあかつきこそで) 』の1番目。宝暦6 (56) 年,江戸中村座初演。 (14) 義太夫節『増補女舞剣紅楓』 (12) の増補。明和1 (64) 年,京都扇屋豊前掾座初演。 (15) 宮薗節『三勝半七長町の段』 (12) の5段目「三勝縁切の段」の移曲。宮薗直伝として『増補宮薗集都大全』 (68?) 所収。 (16) 常磐津節『道行尾花露』 鈍通与三兵衛作。常磐津若太夫の語り。明和5 (68) 年,江戸中村座初演。 (17) 新内節『笠屋三勝あかねや半七千日寺名残の鐘』 初代鶴賀若狭掾作。 (12) の5段目「三勝縁切の段」より移曲。明和末年 (70頃) の作。 (18) 義太夫節『艶容女舞衣 (はですがたおんなまいぎぬ) 』 通称『三勝半七』『酒屋』。 (12) の改作。竹本三郎兵衛,豊竹応津,八民平七の合作。明和9 (72) 年,大坂豊竹座で初演。三勝物中最も有名。 (19) 常磐津節『其常磐津仇兼言 (そのときわずあだなかねごと) 』 通称『三勝半七』。文化9 (1812) 年,江戸中村座初演。作詞2世桜田治助,作曲岸沢古式部。

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