改訂新版 世界大百科事典 「三十九ヵ条の信仰告白」の意味・わかりやすい解説
三十九ヵ条の信仰告白 (さんじゅうきゅうかじょうのしんこうこくはく)
Thirty-Nine Articles
英国国教会の教義的立場を示す信仰個条,聖公会大綱ともいう。1553年にクランマーが作成した《四十二ヵ条の信仰告白》に基づいて63年の聖職会議が制定し,71年に議会の承認を受けた。一方ではローマ・カトリック教会に対し,他方では再洗礼派によって代表される急進主義に対して中道的立場を明確にするため,〈聖書のみ〉〈信仰のみ〉の宗教改革の原理を主張するとともに,歴史的信条と聖職制度を必要としている。他のプロテスタント諸信仰告白とは異なり,信仰告白としての性格はもたず,ただ聖職者だけがこれらの個条への同意を要求された。オックスフォード,ケンブリッジ両大学では,教会ではなく大学当局が《三十九ヵ条》への同意を教職員・学生に要求したが,19世紀以降この要求も放棄された。日本聖公会は,組織成立(1887)にあたって,《三十九ヵ条》を特定の時代の特定の教会が特定の問題に対処するために作成した文書であると判断し,その採用を見合わせた。
執筆者:八代 崇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報