八代(読み)やつしろ

精選版 日本国語大辞典 「八代」の意味・読み・例文・類語

やつしろ【八代】

[一] 熊本県中南部の地名。八代海に面する。中世、城下町として起こり、明治中期以後セメント・製紙・人絹などの工業の発達する工業都市となる。昭和一五年(一九四〇)市制。
[二] 明治四年(一八七一)七月に設置された人吉県を同年一一月に廃して置かれた県。天草郡をも含めて管轄した。同六年白川県(のち熊本県と改称)に合併。
[三] 山梨県の中南部にあった郡。古代、甲斐国の国府が置かれた。明治一一年(一八七八)東八代・西八代の二郡に分かれた。

はち‐だい【八代】

[1] 〘名〙 八つの代。
※詩序集(1133頃)月明妓女家詩序〈菅原在業〉「夜学多年、雖窓雪於三余之陰、朝奨何日、猶期家風於八代之後」 〔史記‐三皇本紀〕
[2] 中国で、後漢・魏・晉・宋・斉・梁・陳・隋の八つの時世をいう。

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デジタル大辞泉 「八代」の意味・読み・例文・類語

はち‐だい【八代】

八つの王朝・時代。

中国の八つの王朝をいう。
の称。「八代詩選」
の称。「八代史」
後漢の称。
中国の伝説上の三皇さんこう五帝ごていの世。

やつしろ【八代】

熊本県中央部の市。球磨川くまがわ河口に位置し、八代海に臨む。もと細川氏の家老松井氏の城下町。セメント・製紙工業や農業が行われる。平成17年(2005)8月、坂本村千丁せんちょう町・鏡町・東陽村・泉村と合併。人口13.2万(2010)。

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日本歴史地名大系 「八代」の解説

八代
やつしろ

諸県庄に含まれ、「和名抄」記載の諸県郡八代郷の郷名を継承する。建武三年(一三三六)二月四日の大前道貞軍忠状(旧記雑録)および同年二月七日の土持宣栄軍忠状(同書)によれば、一月二三日宣栄の軍勢は南朝方についた伊東祐広の八代の宿所を焼払い、居城猪野見いのみ城に逃込んだ祐広を追って同城に押寄せた。しかし多数の死傷者を出して敗退、二九日再び押寄せ同城の大手で合戦となり、宣栄は額に、子息時栄は膝に傷を負っている。同五年四月、北朝方の日向国大将畠山直顕が軍勢を率いて八代城を攻撃、五月九日祐広は降参している(同月一五日「日下部盛連軍忠状」郡司文書)。南北朝期の合戦の感状を記録した土持氏所持文書書上(土持文書)は、祐広との「八代」「猪野見」での合戦に対する感状二通があったことを伝えているが、この文書は検討の余地がある。なお祐広は木脇きわきを領した祐頼の子で、八代八郎を名乗ったという(「伊東氏大系図」宮崎県総合博物館蔵)

嘉慶元年(一三八七)以降、伊東氏と所縁の人物とみられる石見守祐清は祐氏菩提の八代臥龍山光孝こうこう寺に多くの土地を寄進している(同年一二月一八日「石見守祐清寄進状」高岡名勝志など)

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改訂新版 世界大百科事典 「八代」の意味・わかりやすい解説

八代[市] (やつしろ)

熊本県中南部の市。2005年8月旧八代市と鏡(かがみ)町,千丁(せんちよう)町および泉(いずみ),坂本(さかもと),東陽(とうよう)の3村が合体して成立した。人口13万2266(2010)。

八代市東部の旧村。旧八代郡所属。人口2775(2000)。東は宮崎県に接する。村全体が九州山地に属し,山林が総面積の98%に達する。村の東部は五家荘の中心地で,全国でも有数の秘境であり,平家の落人が隠棲した地として知られる。農林業が主体で,特産の茶を中心にエノキタケシイタケなどの栽培も盛んで,良材の産地でもある。古くから山地の斜面ではソバやヒエの焼畑農業が行われてきたが,現在はほとんどみられない。平家の落人の創作といわれる久連子古代踊が年3回踊られる。また珍鶏久連子鶏が今も飼われている。全村が五木五家荘県立自然公園に含まれ,栴檀轟(せんだんとどろき)ノ滝,氷川ダムなど見所が多い。

八代市北西端の旧町。旧八代郡所属。人口1万6174(2000)。西は八代海に面し,南は旧八代市に接する。八代平野のほぼ中央にあり,北東境沿いを氷川,中央部を鏡川,南西境沿いを大鞘川が北西流し,八代海に注ぐ。全域を低地が占め,その8割が近世以後の干拓地であり,文政地区は1821年(文政4)鹿子木量平が700町にわたって造成した新地にあたる。また北新地は1926年,県によって造成された。農業が主産業で,イグサと米を主体に,メロン,トマトなどの施設園芸も盛ん。縄文中期の有佐貝塚,鮒取神事で名高い印鑰(いんにやく)神社など旧跡が多い。

八代市南西部の旧村。旧八代郡所属。人口5771(2000)。西は旧八代市に接する。九州山地の山々が広く分布し,中央を球磨川が北流する。主産業は農林業で,米,麦のほか茶,ミカン,シイタケなどを産し,近年は茶の栽培の伸びが著しい。球磨川沿いに肥薩線,国道219号線が走り,町の東部を九州自動車道が通る。旧八代市への通勤者も多い。球磨川には県営荒瀬ダム,支流油谷川には九州電力大平発電所(最大出力50万kW)がある。

八代市北西部の旧町。旧八代郡所属。1976年町制。人口6989(2000)。八代平野の中央部を占め,南は旧八代市に接する。全域が近世以来の干拓地からなり,東から西へ加藤清正築造の新牟田新地,藩政時代の四百町開,二の丸新地と新干拓地が形成されていった。農業はイグサ栽培と米作が主体で,特にイグサを原料にした畳表の生産は,町の主要な農産加工品である。工業は1964年の新産業都市区域指定を契機に発展し,食料品,繊維などの出荷額が多い。肥後畳表の始祖として知られる岩崎主馬(しゆめ)忠久をまつる岩崎神社がある。

八代市中部の旧村。旧八代郡所属。人口2805(2000)。西は旧八代市接する。東・南部九州山地に属する山地が広く占め,北西部には八代平野に続く低地が開ける。河俣川が中央部を北西流し,北西部を西流する氷川に合流する。農林業が主体で,米,麦のほかに山麓でのミカン,茶,タケノコなどの栽培が盛ん。ショウガの山地としても知られる。江戸末期から明治にかけて全国各地に多くの眼鏡橋をかけた種山石工の出身地で,橋本勘五郎は皇居の旧二重橋を造っている。
執筆者:

八代市西部の旧市で八代海に臨む。1940年市制。人口10万6141(2000)。市街地は球磨川下流の扇状地性三角州上に発達する。産島(うぶしま)などには縄文~弥生時代の遺跡,東部山麓に古墳が分布し,古代に興善寺,妙見宮が創建された。八代の町は妙見下宮(現,八代神社)の門前町から起こり,地名もこの社(やしろ)に由来するという。八代の名は《日本書紀》に見え,《和名抄》には〈夜豆志呂〉と訓じられている。南北朝時代,名和氏によって古麓(ふるふもと)城と呼ばれる山城が築かれ,その後,相良(さがら)氏が城郭と城下町を拡張した。また対外貿易のため,徳淵(とくのふち)の港が球磨川河口に築かれた。16世紀末,小西行長が平城の麦島城を築いたが,1619年(元和5)の大地震で崩壊した。17世紀初めに加藤正方が松江城(八代城)を築き,その後,細川氏の家老松井氏の城下町として栄え,明治維新を迎えた。

 以後,八代は豊かな球磨川の水と農林資源に恵まれた田園都市として発展してきた。明治中期,九州最初のセメント工場が立地し,1896年九州鉄道(現,鹿児島本線),1909年肥薩線が開通した。大正末期にかけて製紙,人絹,食品など資源立地型の大企業が次々と進出し,工業都市に変容していった。近年,八代貿易港の整備事業が進み,臨海埋立地に石油基地や建材工場などが立地する一方,セメント工場が撤退するなど工業構成にやや変化がみられる。また,九州自動車道が通じ,国道3号線の八代・日奈久バイパス,南九州西回り自動車道の八代~芦北間の建設など,産業・交通基盤の整備が進んでいる。2004年九州新幹線の新八代~鹿児島中央間が開業(10年博多~新八代間が開業して全線開業),これに伴って鹿児島本線の八代~川内間は肥薩おれんじ鉄道の経営となった。平野部の大半を占める干拓地の農村では米,イグサの栽培と畳表の生産のほか,トマト,スイカなどの施設園芸が盛んである。郡築(ぐんちく)は激しい小作争議(1924)のあった所として知られ,市南部の日奈久温泉は八代の奥座敷である。名産に高田(こうだ)焼やザボンがある。
執筆者:

八代(山梨) (やつしろ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「八代」の意味・わかりやすい解説

八代
やつしろ

山梨県中部,笛吹市中西部の旧町域。甲府盆地の南東部,御坂山地から北流して笛吹川に注ぐ浅川の流域に位置する。 1956年八代村と御所村が合体して町制施行。 1958年花鳥村の一部を編入。 2004年石和町,御坂町,一宮町,境川村,春日居町と合体して笛吹市となった。地名は平安期の郷名にちなむ。笛吹川沿いの低地では米作,浅川の扇状地では養蚕が主産業であったが,近年ではブドウ,モモなどの果樹栽培が中心となり,畜産なども行なわれている。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「八代」の解説

八代 (ヤツシロ)

学名:Citrus yatsushiro
植物。ミカン科の常緑低木

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世界大百科事典(旧版)内の八代の言及

【熊本[県]】より

…天草,五家荘は1868年(明治1)閏4月富岡県,6月天草県となり,8月長崎府(のち長崎県)に編入された。71年廃藩置県を経て11月府県統廃合の際,熊本県下の下益城(しもましき),宇土,芦北,八代(やつしろ)の4郡と人吉県および長崎県の天草郡をあわせて八代県が新設された。またこの時熊本県に含まれていた豊後3郡が新置の大分県に,人吉県管轄の椎葉山諸村が美々津県に移管された。…

※「八代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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