上稲子村(読み)かみいなこむら

日本歴史地名大系 「上稲子村」の解説

上稲子村
かみいなこむら

[現在地名]芝川町上稲子

上柚野かみゆの・下柚野両村の西に位置する。大部分山地で、稲子川沿いに狭小な地が開け、集落が点在する。中世富士上方ふじかみかたのうちで稲子郷と称し、伊奈古などとも記される。天文二年(一五三三)一〇月一九日の今川氏輝判物(旧辻坊葛山氏文書)によれば、村山むらやま浅間神社(現富士宮市)別当寺興法こうほう寺寺務代つじ坊頼真に同社神領の「伊奈古郷」ほかが安堵されている。永禄一二年(一五六九)二月二四日、武田信玄の駿河侵攻に際して降参し、新たに武田方に仕えることになった佐野惣左衛門尉に信玄から「稲子・野中」のうち八貫文の地ほかが与えられている(「武田信玄判物写」佐野氏古文書写)。武田氏に対抗して今川氏に援軍を送った北条氏政は、同年一二月一七日に富士浅間社大宮司富士信忠に大宮おおみや(現富士宮市)を回復すれば一所「塩沢・野中・稲子」を含む一四ヵ所を与えると約束しているが(「北条氏政判物」大宮司富士家文書)、これらの土地の多くは先の佐野惣左衛門尉に与えられた土地と重複しており、戦いの情勢は北条氏にとってかなり劣勢であった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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