下れる(読み)くだされる

精選版 日本国語大辞典 「下れる」の意味・読み・例文・類語

くださ‐・れる【下れる】

〘他ラ下一〙 くださ・る 〘他ラ下二〙 (動詞「くだす(下)」に、受身、尊敬助動詞「る」のついてできたもの)
[一]
① (「る・れる」が尊敬の意の場合) 「与える」「くれる」の意の尊敬語。お与えになる。お下しになる。また、(人などを)およこしになる。くださる。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「上達部たちの御中に、『人々これに名してくだされよ』とてたうびつ」
※虎明本狂言・墨塗(室町末‐近世初)「なにが人を下さるるひまのなひ事がござらふぞ」
② (「る・れる」が受身の意の場合) 上位者から「下賜される」「与えられる」というところから、「もらう」の意の謙譲語となる。
(イ) いただく。頂戴する。
平家(13C前)七「経正御硯くだされて」
歌舞伎・丹波与作手綱帯(1693)一「おれも美しい小袖を下された」
(ロ) 特に、飲食物をいただくの意で、「飲む」などの謙譲語。
御伽草子・酒呑童子(室町末)「かく珍らしき御酒一つ御前にて下されて」
※浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)上「拙者も深うは下されぬが少御酒を好む故」
[二] 補助動詞として用いる。他の動作を表わす語句について、その動作の主が恩恵を与える意を、恩恵を受ける者の立場から敬っていう。「…(て)くれる」の尊敬語。
(イ) 動詞に接続助詞「て」のついたものにつく。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)六「既に蟻にさし殺さるるを、たすけて下された礼にまいったぞ」
(ロ) 動詞の連用形、または、それに「お」を冠した形につく。
日葡辞書(1603‐04)「Tamuqecudasare, ruru, eta(タムケクダサルル)
※歌舞伎・百夜小町(1684)二「すこしの間(ま)このお子を私へお預け下されませ」

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