墨塗(読み)スミヌリ

デジタル大辞泉 「墨塗」の意味・読み・例文・類語

すみ‐ぬり【墨塗(り)】

墨を塗ること。
墨付け正月」に同じ。 新年》

すみぬり【墨塗】

狂言大名と別れる女が水を目につけて泣くまねをするので、太郎冠者が水を墨に入れ替えると女の目の縁が真っ黒になる。

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精選版 日本国語大辞典 「墨塗」の意味・読み・例文・類語

すみ‐ぬり【墨塗】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. すみつけ(墨付)俳諧・新季寄(1802)〕
    2. 相手の顔などに墨を塗り付けること。特に正月に、墨または鍋墨を厄落しとして他人の顔に塗り付けること。また、その行事。墨付け正月。墨付け。〔風俗画報‐二二四号(1901)〕
    3. ( 比喩的に ) 事実、存在などを否定して消し去ること。抹殺
      1. [初出の実例]「特(こと)に女に取っては、一生を全く墨塗(スミヌ)りにされるのだから、定基の妻は恨みもしたらう、悪(にく)みもしたらう」(出典:連環記(1940)〈幸田露伴〉)
    4. 墨が塗ってあること。また、墨を塗ること。
      1. [初出の実例]「明立も庫の裏白土厚き〈横几〉 雫にしるる墨塗の戸樋〈遠水〉」(出典:俳諧・雑談集(1692)下)
  2. [ 2 ] 狂言。各流。大名との別れに水入れの水を目につけて泣くまねをする女の様子に気づいた太郎冠者が、水を墨に入れ替えると、女はそれと知らずにつけて、目のまわりをまっ黒にする。「狂言記(続)」には「墨塗女」の曲名で見える。

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改訂新版 世界大百科事典 「墨塗」の意味・わかりやすい解説

墨塗 (すみぬり)

狂言の曲名。大名狂言。大蔵,和泉両流にある。訴訟のため都に滞在していた大名が,無事解決し帰郷するに際し,在京中なじんだ女のところへ別れを告げに行く。女は悲しげに泣くが,実は鬢水(びんみず)入れの水で目をぬらして涙と見せかけていたのである。それに気づいた太郎冠者は,水を墨に取りかえておく。それと知らぬ女がなおも墨を目の下に塗って泣くので,その顔を見た大名は初めて女の心を知り,恥をかかせようと,形見に鏡を与える。顔をうつしてみた女は怒り,太郎冠者をつかまえて墨を塗り,大名にも墨を塗って,逃げる両人を追い込む。登場は大名,太郎冠者,女の3人で,大名がシテ。《平中物語》や《堤中納言物語》などに見える説話を素材に,大名狂言らしい,明るくほほえましい作に脚色している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「墨塗」の意味・わかりやすい解説

墨塗
すみぬり

狂言の曲名。大名狂言。領地争いの訴訟のため都に長期滞在していた大名(シテ)が、万事解決したので国元に帰ることになる。太郎冠者(かじゃ)を伴ってなじみになった女のところへ別れをいいに行くが、女は嘆き悲しみ、大名はその心根についほだされる。ところが、それは側に置いた水をしきりに顔につけるうそ涙。気づいた冠者が水を墨に取り替えておくと、それとは知らぬ女はしきりにうそ涙をつけてかきくどく。真っ黒になった顔を見て大名はびっくり仰天、別れの印だといって鏡を渡す。鏡に映った自分の顔を見て女は怒り心頭、2人の顔に墨を塗り付け追い込む。

 別れ話をめぐる、男の身勝手さと女の打算が、爆笑喜劇のうちにともどもに露呈する。歌舞伎(かぶき)舞踊『墨塗女』(常磐津(ときわず)・1907初演)はこれによったもの。

[油谷光雄]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「墨塗」の解説

墨塗
(通称)
すみぬり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
六歌仙狂画墨塗
初演
明治5.1(東京・村山座)

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