不三得七法(読み)ふさんとくしちほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「不三得七法」の意味・わかりやすい解説

不三得七法
ふさんとくしちほう

律令(りつりょう)時代に、国ごとに国内を通計して田租(でんそ)の徴集予定額の70%を確保することを国司の責任とした一種の徴租歩留(ぶどま)り法。令(りょう)の規定では、稲作の損害の程度を十分法で表し、5分以上の損害のあった戸の田租は全免することになっていた。また慣習的に4分以下の損害の場合にもその程度に比例して田租が減免された。当時の粗放な稲作技術では損害の発生は例年のことであったから、この減免措置のある限り田租を100%徴集することは困難であった。

 そこで、一方ではこの減免措置を悪用して私腹を肥やす国司の不正を防止し、他方、田租収入の安定を維持するためにこの方策がとられた。724年(神亀1)制定ののち、797~805年(延暦16~24)の間に3回ほど手直しが行われた期間を除いて、ほぼ全律令時代を通じて行われた。

[虎尾俊哉]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「不三得七法」の解説

不三得七法
ふさんとくしちのほう

奈良平安時代を通じて,国ごとに国内を通計して予定の田租の7割の収納をめざし,国司の責任とした制度。8世紀末~9世紀初頭に一時人別あるいは戸別に免除率を定めるなどの変遷もあったが,田租の7割確保は一貫した目標であった。賦役令の水旱条には天災により5割以上の損で租を免除するなど減収に応じた免除規定があるが,実際には7割の定率収租法が行われており,日本の田租制の特色である。損田3割以内を例損といい,3割をこえると異損として太政官の審査を必要とした。

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改訂新版 世界大百科事典 「不三得七法」の意味・わかりやすい解説

不三得七法 (ふさんとくしちのほう)

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世界大百科事典(旧版)内の不三得七法の言及

【損田法】より

…さらに成立時期は不明であるが,50戸以上の損田が一所に集中している場合は専使により中央に急行(馳駅)言上すべきものとされている(延喜民部式)。(3)収租定率法 毎年一定の実収を確保するために,724年(神亀1)国内通計して7割以上の租を確実に収納,その余を国司の自由処分にゆだねるとする不三得七法が定められた。一種の国司による田租請負制の成立ともいえる。…

※「不三得七法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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