内科学 第10版 「不整脈源性右室心筋症」の解説
不整脈源性右室心筋症(その他の心筋症)
概念・病態生理
右室優位の心拡大と心機能低下を基本病態とし,右室起源の心室性不整脈を特徴とする心筋疾患である.拡張型,肥大型,拘束型と並列の独立した心筋症として分類されている.病理学的には右室自由壁を中心とする脂肪浸潤,線維化,心筋細胞脱落などを認める.右室起源の心室期外収縮と心電図で遅延電位を反映するε波を認める.若年者の突然死の原因として重要である.心不全死する症例も多い.2~3割は家族性に発症する.心筋細胞の接着因子であるデスモゾームを構成する蛋白をコードするデスモプラキン,プラコグロビン,プラコフィリン2などの原因遺伝子が報告されており,デスモゾーム病として病態が形成される.
臨床症状
労作時の動悸,失神,めまいなど不整脈症状,胸痛,息切れ,浮腫など心不全症状を呈する.他覚的には右心不全症状,期外収縮を認める.目立った所見はないことも多い.
検査成績・診断
胸部X線では右房・右室拡大のため心陰影は球状を呈する.心電図では左脚ブロック型の心室期外収縮,心室頻拍,右軸偏位,右側胸部誘導でのT波陰転,ε波を認める(図5-13-21).加算平均心電図では遅延電位が陽性になる.心エコー,CT,右室造影で右室拡張,びまん性壁運動異常,三尖弁閉鎖不全,MRIで右室壁の脂肪浸潤を認めることがある.確定診断は心内膜下心筋生検による病理診断で,心筋への脂肪浸潤や線維化を認める(図5-13-21).炎症性細胞浸潤を認めることもある.これらの変化は左室に及ぶこともある.鑑別すべき疾患は,Uhl奇形,拡張型心筋症,心筋炎である.Brugada症候群で本症類似の病変が認められることがあり,疾患が一部オーバーラップするという考え方もある.
治療
特異的な治療はない.症候に応じて,心不全,不整脈に対する薬物治療を行う.心室性不整脈は運動にて誘発されることから,日常生活の制限も必要となる.病変は進行性であることが多く,アブレーションを行っても根治は難しい.適応があればICD(implantable cardioverter defibrillator)植え込みや心臓移植が行われる.[磯部光章]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報