日本大百科全書(ニッポニカ) 「与党・野党」の意味・わかりやすい解説
与党・野党
よとうやとう
一般には、与党とは政権を担当している政党(政府党・政権党)、野党とは政権の座についていない政党(在野党)をさす。元来、この与党・野党という語は、二大政党制による議会政治・政党政治が円滑に行われていた国々の二大政党に対して用いられてきた。たとえば、イギリスでは野党のことを「陛下の反対党」His Majesty's Oppositionとよんでいるが、この場合には、野党はいつでも政権担当能力をもつ政党と考えられ、事実、野党は、政権担当に備えて「影の内閣」(シャドー・キャビネット)を組織している。しかし、19世紀末以降、資本主義国家内部に資本主義そのものに反対する社会主義政党が登場すると、本来の意味での与党・野党という意味が変質し、社会主義政党が革命に成功すれば、従来の与党である資本主義政党は永久に政権の座から外されかねないことをも意味するようになった。事実、今日の社会主義国家においてはほとんどが共産党一党のみで、いわゆる野党は存在しない。
もっとも、第二次世界大戦後の現代資本主義国家においては、社会主義諸政党は、共産党も含めて、政権獲得後も反対政党の存続を認めているので、社会主義政党は、国によって、与党になったり、野党になったりしている。また政党が多数分立し、諸政党の連合によって政権が成立するフランスやイタリアのような国では、主義・主張やイデオロギーで区分する与党・野党といった従来の分類法がかならずしも妥当しない場合もある。その典型的な例が、1996年、イタリアで成立した中道左派連合「オリーブの木」政権である。
[田中 浩]