日本大百科全書(ニッポニカ) 「世界をゆるがした十日間」の意味・わかりやすい解説
世界をゆるがした十日間
せかいをゆるがしたとおかかん
Ten Days that shook the World
ロシア十月革命の現実を克明に追ったルポルタージュの傑作。1919年刊。アメリカ人ジョン・リードが左翼系雑誌『ザ・マッセズ』の通信員として1917年ロシアに入国、革命の中心地ペトログラード(のちのレニングラード)で同年11月のボリシェビキの決起を目の当たりにし、なまの資料と体験を基にしてまとめた。臨時政府の首相ケレンスキーに対する革命家たちの幻滅と反感、激しい文書合戦と論争、ひどい食糧不足と急激な物価上昇、治安の悪化、指揮官を失った軍隊、政府機関や銀行の反革命ストライキ、投機業者の暗躍などの混乱状態から、民衆がしだいに自分たちこそ自分たちの主人であるとの意識に目覚めていくありさまが、レーニンやトロツキーの演説、数多くの声明書や告示などを織り混ぜて、まざまざと描き出されている。巻頭にレーニンのきわめて好意的な序文、巻末に豊富な資料が付されている。
[小池健男]
『原光雄訳『世界をゆるがした十日間』全2冊(岩波文庫)』▽『松本正雄・村山淳彦訳『世界をゆるがした十日間』上下(新日本出版社・新日本文庫)』