出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ミュッセの詩は,これ以後内面的な深みを帯びるようになり,《五月の夜》ほか3編の夜の《詩篇》(1835‐37)をはじめ,喜劇《戯れに恋はすまじ》(1834),劇《ロレンザッチョ》(1834)など多くの傑作が生まれた。また,この恋の決算書として書かれた長編小説《世紀児の告白La confession d’un enfant du siècle》(1836)は,いわゆる世紀病の診断書として,19世紀前半の青年心理を理解するための重要な文献である。 ミュッセはロマン派のなかで最も古典的な詩人で,女優ラシェルのために古典悲劇まで書こうと企てたが,病弱に加えて若き日の放蕩のため,30歳代に入るや急速に心身の衰えを見せ,晩年は,パリの街に現れ始めたグリゼットと呼ばれる働く娘の典型となった《ミミ・パンソン》(1845)を含む珠玉のような中・短編集2冊と,いくつかの劇を書いているにすぎない。…
…とりわけルソーの書簡体小説《新エロイーズ》や自伝的な作品《告白録》がその代表とされる。恋愛を中心とする自己の感情の起伏や精神的苦悩を主人公に仮託して描く自伝文学は,ロマン主義文学の中でも主要な位置を占め,ゲーテの《若きウェルターの悩み》,シャトーブリアンの《ルネ》(1802),セナンクールの《オーベルマン》(1804),コンスタンの《アドルフ》へと継承され,ミュッセの《世紀児の告白》(1836)へと受け継がれる。この系譜の中からは,激変する社会の現実と自己の存在との乖離(かいり)を感じ,愛に満たされず何かを求め続け現実から逃避していく〈世紀病mal du siècle〉を病んだロマン派的魂の典型が浮かび上がる。…
※「世紀児の告白」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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