世紀児の告白(読み)セイキジノコクハク(その他表記)La confession d'un enfant du siècle

デジタル大辞泉 「世紀児の告白」の意味・読み・例文・類語

せいきじのこくはく【世紀児の告白】

原題、〈フランスLa Confession d'un enfant du siècleミュッセの自伝的小説。1836年刊。ジョルジュ=サンドとの恋愛失恋題材に、当時フランスの若者蔓延まんえんしていた世紀病実像を描く。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「世紀児の告白」の意味・わかりやすい解説

世紀児の告白
せいきじのこくはく
La confession d'un enfant du siècle

フランスの作家ミュッセの自伝風小説。1836年刊。ジョルジュ・サンドとの不幸な恋愛を描く。自らの罪を悔いる作者は、女主人公ブリジット(サンド)やスミト(恋敵のパジェルロ)を美化し、彼の分身オクターブには厳しい。しかし、同時に自らを世紀児と規定し、愛を不可能にした自身の執拗(しつよう)な不信懐疑を時代そのもののもつ不安や虚無感に帰している。時代性を要約する第1章は、比喩(ひゆ)の的確さと影像の豊かさで、散文家ミュッセの評価を高めた。

[佐藤実枝]

『小松清訳『世紀児の告白』全二冊(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「世紀児の告白」の意味・わかりやすい解説

世紀児の告白
せいきじのこくはく
La Confession d'un enfant du siècle

フランスのロマン派詩人アルフレッド・ド・ミュッセ自伝小説。 1836年刊。5歳年長の女流作家ジョルジュ・サンドとの恋愛体験を,いわゆる「世紀病」の憂愁と結びつけて分析したもの。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の世紀児の告白の言及

【ミュッセ】より

…ミュッセの詩は,これ以後内面的な深みを帯びるようになり,《五月の夜》ほか3編の夜の《詩篇》(1835‐37)をはじめ,喜劇《戯れに恋はすまじ》(1834),劇《ロレンザッチョ》(1834)など多くの傑作が生まれた。また,この恋の決算書として書かれた長編小説《世紀児の告白La confession d’un enfant du siècle》(1836)は,いわゆる世紀病の診断書として,19世紀前半の青年心理を理解するための重要な文献である。 ミュッセはロマン派のなかで最も古典的な詩人で,女優ラシェルのために古典悲劇まで書こうと企てたが,病弱に加えて若き日の放蕩のため,30歳代に入るや急速に心身の衰えを見せ,晩年は,パリの街に現れ始めたグリゼットと呼ばれる働く娘の典型となった《ミミ・パンソン》(1845)を含む珠玉のような中・短編集2冊と,いくつかの劇を書いているにすぎない。…

【ロマン主義】より

…とりわけルソーの書簡体小説《新エロイーズ》や自伝的な作品《告白録》がその代表とされる。恋愛を中心とする自己の感情の起伏や精神的苦悩を主人公に仮託して描く自伝文学は,ロマン主義文学の中でも主要な位置を占め,ゲーテの《若きウェルターの悩み》,シャトーブリアンの《ルネ》(1802),セナンクールの《オーベルマン》(1804),コンスタンの《アドルフ》へと継承され,ミュッセの《世紀児の告白》(1836)へと受け継がれる。この系譜の中からは,激変する社会の現実と自己の存在との乖離(かいり)を感じ,愛に満たされず何かを求め続け現実から逃避していく〈世紀病mal du siècle〉を病んだロマン派的魂の典型が浮かび上がる。…

※「世紀児の告白」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android