中国による南シナ海岩礁埋め立て問題(読み)ちゅうごくによるみなみしなかいがんしょううめたてもんだい

知恵蔵 の解説

中国による南シナ海岩礁埋め立て問題

南シナ海スプラトリー諸島(中国は南沙諸島と呼称)で、中国が数カ所の岩礁の埋め立て工事を進めたことについて、関係各国が非難している問題。埋め立ては2013年頃から進んだとみられ、中国は造成した土地に滑走路港湾などの軍事施設を建設している。各国は国際法に反するなどとして非難しているが、中国は自国領内に何を造ろうと主権の範囲内だと主張し占拠を続けている。
南シナ海の領有権問題は、石油・天然ガスや海洋資源に注目が集まる中、近年になって周辺各国の紛争火種となっていた。こうしたことから、南シナ海問題の平和的解決を目指す「南シナ海行動宣言」のガイドラインを、11年7月に中国とASEANで基本合意した。合意内容には領有権を巡る紛争の平和的解決を目指し、敵対的行動を自制する旨が記されており、フィリピン政府は中国の軍事施設の建設がこれに反するとし、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に膨大な証拠書類を提出し解決を求めている。
現在、建設が進んでいる場所としても、中国が実効支配するジョンソン南(赤瓜)、ガベン(南薫)、クアテロン(華陽)、ヒューズ(東門)、エルダド(安達)などの各岩礁が挙げられている。造成によって数十ヘクタールもの面積に達している岩礁もあり、人工島建設などとも称されるが、いずれも国際法上では岩礁に当たるものと考えられ、埋め立てても島になったり領海に変更を及ぼしたりすることはない。中国側は、周辺各国や米国などの批判に対し、フィリピンやベトナムなどは既に岩礁に軍事施設を建設済みであるとし、「自宅の敷地内での工事に人からあれこれ言われる筋合いはない」などと反駁(はんばく)している。

(金谷俊秀 ライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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