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中性子爆弾 ちゅうせいしばくだんneutron bomb

翻訳|neutron bomb

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

中性子爆弾
ちゅうせいしばくだん
neutron bomb

主として中性子による人員殺傷を目的とする核兵器。普通の核兵器爆風による破壊,熱線による焼夷効果および中性子,ガンマ線による即時放射効果と放射性物質の降下による残留効果をもつが,そのうち即時放射効果を強調したものである。 1967年アメリカの原子力委員会 (AEC。 ERDAの前身) は,中性子爆弾と純融合爆弾を研究開発中であると発表した。 77年アメリカ政府が生産を決定したものは,戦場用ミサイル「ランス」の弾頭用のもので,次のような効果をもつものといわれる。 (1) 爆心からの距離約 130mで,すべての建物や車両が破壊され,人員は即死する。 (2) 800mで,人員は即時能力を喪失,ほとんど 100%死亡するが物理的破壊は起らない。 (3) 1600mで死亡者と放射障害患者が生じる。 (4) 2000mで,ほとんど効果はなくなる。このような特性は,第一線兵器として,かつまた市街戦用として適当なものとされており,200mmおよび 155mm砲弾用にも生産される計画であった。戦略的には,超小型で,非戦闘員,非軍事目標に損害を及ぼすことの少い核兵器で,その使用の可能性を増し,いわゆる核兵器の敷居を低くすることによって,核抑止力を通常戦争にまで作用するものとして北大西洋条約機構諸国に関心がもたれていた。しかしまた,通常戦争が容易に核戦争にエスカレートする危険性を説き,中性子が空気中の窒素に照射して生じる炭素 14の放射性について警告する者もいる。

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デジタル大辞泉の解説

ちゅうせいし‐ばくだん【中性子爆弾】

核兵器の一。熱や爆風を極力少なくして、中性子線放射量を多くしたもの。生物に対する殺傷効果が大きい。

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百科事典マイペディアの解説

中性子爆弾【ちゅうせいしばくだん】

1キロトン以下の超小型原子爆弾を引金にし,重水素化リチウムの核融合反応を起こさせ,同程度の原子爆弾の約3倍の中性子を放射する爆弾。放射線強化弾頭とも呼ばれる。熱と爆風の破壊作用はせいぜい半径100〜200mだが,中性子の致死作用は半径900mの兵員に致死量の数十倍の放射線をあびせて数分間で死亡させてしまうが,建造物破壊や放射能汚染はわずかである。
→関連項目核兵器中性子

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世界大百科事典 第2版の解説

ちゅうせいしばくだん【中性子爆弾 neutron bomb】

核爆発によって放出される放射線の割合を増大させ,爆風,熱線,残留放射線の効果を抑制した核兵器。正確には放射線強化弾頭enhanced radiation warheadと呼ばれる。一般に出力10kt以下の核兵器では放射線効果が最大となるが,放射線強化弾頭は放射線(とくに中性子)の放出を増大させた小型(出力1~2kt)の核融合兵器(水素爆弾)である。1978年6月《ワシントン・ポスト》紙がランス・ミサイル用放射線強化弾頭の開発予算がひそかにエネルギー研究開発庁(ERDA)の公共事業費の中に含まれていると報じたことから,アメリカ上院軍事委員会で大論争を生じ,さらにアメリカ,ヨーロッパで人道的立場と核の〈しきい〉を低くするおそれから一大センセーションをまき起こした。

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大辞林 第三版の解説

ちゅうせいしばくだん【中性子爆弾】

中性子線の放射を強くして人間・生物の殺傷のみを目的とする小型の水素爆弾。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

中性子爆弾
ちゅうせいしばくだん
neutron bomb

核兵器の一種。原子爆弾、水素爆弾に次ぐ第三の世代の核兵器ともいわれているが、原理的には非常に小型の水素爆弾と考えてよい。アメリカ軍の正式名称では放射線強化兵器(ERW)とよばれている。戦場で使いやすいようにという目的で開発された典型的な戦術核兵器である。爆発の威力と残留放射線は広島型原爆の10分の1あるいは数十分の1程度に小さいが、爆発の瞬間に発生する放射線、とくに人体に即効性のある中性子線を強くし、これで人員を殺傷することをねらっている。熱線や爆風による致死領域よりも、放射線による致死領域のほうがずっと広く、建物や戦車は破壊されずに残っても、中の人間が致死線量以上の放射線を受けることになる。アメリカでは1957年ごろから開発研究が始められ、76年ごろほぼ完成した。カーター大統領はまずヨーロッパに配備しようとしたが、オランダなどの各国で強い反対運動が起こり、生産と配備を一時延期していた。81年8月、レーガン大統領は生産の再開を決定した。最初は155ミリ榴弾(りゅうだん)砲とランス地対地ミサイル用の弾頭がつくられ、ついで巡航ミサイル用の弾頭がつくられた。フランスもアデス短距離弾道ミサイルにERWを搭載する計画であったが、90年6月に政治的理由で中止された。[服部 学]
『安斎育郎著『中性子爆弾と核放射線』(1982・連合出版)』

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世界大百科事典内の中性子爆弾の言及

【核兵器】より

…この反応はかなり高い確率で生ずるし,生成した三重水素はさらに(3)の反応に関与することとなる。以上の熱核反応で発生したエネルギーの大部分は質量の小さい中性子が運動エネルギーとして持ち去ることとなり,これが後述の3F爆弾や中性子爆弾の実現を可能としている。 核融合反応を起こすには数千万Kの温度が必要であり,現在地上でこのような温度を作りうる唯一の方法は核分裂反応を用いることである。…

※「中性子爆弾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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