放射能汚染(読み)ほうしゃのうおせん(英語表記)radioactive contamination

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

放射能汚染
ほうしゃのうおせん
radioactive contamination

放射性物質によって,環境,食物,人体が汚染されること。核実験による「死の灰」,放射性同位元素の取扱いミス,原子力施設の事故などが汚染の原因となる。放射能汚染で問題なのは,半減期の長いベリリウム 10 (250万年) ,クロール 36 (30万年) などと,生体の中に入ったまま体外に排出されにくいストロンチウム 90 (28年) ,セシウム 137 (30年) などが増大することである。現在三重水素や,炭素 14は 30年前の 100~1000倍に達しており,炭素 14の量は自然の宇宙線によるものの2倍にあたる。放射能汚染を防止するためには放射性物質の適正な管理が重要である。

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百科事典マイペディアの解説

放射能汚染【ほうしゃのうおせん】

核物質による放射能汚染は実験室などでの直接的被害もあるが,より大規模な問題となるのは環境汚染としてのそれである。第2次大戦後の各国の核兵器開発のための原水爆実験は,判明しているものだけで1996年2月までに2044回(地下実験を含む)に及び,それらは地球規模で膨大な汚染物質をまきちらし,実験場近くの多数の住民が癌や白血病に罹患している。原子力発電炉事故による汚染も大きく,1979年の米国スリー・マイル・アイランド原発事故では住民の癌,甲状腺障害,死産・流産が発生する恐れが指摘され,1986年のソ連チェルノブイリ原発事故では1km2当り1キュリー以上のセシウム137で汚染された地域は5万8000km2,影響を受けている住民は400万人と発表されている。また核兵器工場や原子力船の事故も多く,放射性廃棄物の海洋投棄,核搭載機の海中落下も問題となっている。さらに,核工場や原発から気体や排水の形で日常的に漏れる放射能や,ウラン採掘現場や廃棄物の屋外放置などによる環境汚染も重大な問題となっている。1999年9月には茨城県東海村の民間ウラン加工施設(JCO東海事業所)で,日本初の臨界事故が発生し,現場の作業員など69人が被ばく(2名死亡)し,県は施設から半径10km以内にある住民31万人に屋内退避を呼びかけるなど大きな問題になった(東海村臨界事故)。また1999年10月には韓国の月城原発3号機で重水が漏れ,作業員22人が被曝くした。2011年3月11日に起こった,東日本大震災にともなう東京電力福島第一原発の大事故で,大量の放射性物質が流出・放出されるという事態が発生,世界を震撼させた。政府は当初,福島第一原発施設から半径10km以内の住民に避難指示,さらに20km以内に避難指示の範囲を拡大し,30km以内に屋内退避(その後自主避難)を指示(3月15日),上空を飛行禁止とした。さらに4月22日,半径20km圏外で累積放射染量が年間20mSv(ミリシーベルト)以上に達する可能性のある地域を計画的避難地域に指定した。国の原子力安全・保安院はINES(国際原子力事象評価尺度)で最悪レベルのレベル7(暫定)と発表。放射性物質の大量流出・放出は,大気汚染海洋汚染土壌汚染を引き起こしつつあり,水道水,農産物,魚介類など海産物の短期的な摂取制限や出荷制限のみならず,今後の農業,漁業に大きな影響をもたらすことは確実とされた。チェルノブイリ原発事故に匹敵する放射能の大漏洩が起こったことは確かだが,汚染がどこまで拡散し,どの程度蓄積されているか精確な詳細が検証されたとはいえない。こうした事態を受け,2012年6月環境基本法の重大な改正・公布がなされた。環境基本法第13条の放射性物資を適用除外とする規定が削除される改正法案が国会で成立公布された。この改正は,原子力規制委員会設置法の附則として提案可決されたものである。さらに2013年12月〈放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律〉が施行されている。従来,環境基本法では,放射性物質による環境汚染を防止するための措置について,原子力基本法等の原子力関係の法律に対応を委ねていたが,環境基本法が改正され原子力基本法等に委ねる旨の規定が削除されたため,放射性物質による環境汚染を防止するための措置は環境基本法の対象とされることとなった。しかし大気汚染防止法等の個別の環境法には,依然として,放射性物質による環境汚染について適用除外とする規定が置かれていため,2013年12月施行の〈整備に関する法律〉によって大気汚染防止法等の個別法においても放射性物質による環境汚染を防止する措置を講ずるための規定の整備が行われた。
→関連項目指定廃棄物ホットスポット

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大辞林 第三版の解説

ほうしゃのうおせん【放射能汚染】

核実験・原子炉の運転・放射性物質を利用した研究などによって、放射性物質が器具・人体・環境などに付着・拡散し、なんらかの障害の原因となる可能性をもつこと。

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世界大百科事典内の放射能汚染の言及

【海洋汚染】より

…海洋を汚染するおもなものは,陸地からの汚染物の流入,大気浮遊塵の落下,タンカーその他の船からの廃棄物の放出などであるが,最近は,火力発電所や原子力発電所の温排水による沿岸海域の熱汚染,陸上原子力施設,原子力船からの放射性廃棄物の放出による海洋の放射能汚染などが憂慮されている。大気中に放出された汚染物質も,降水によって直接海面に落下するほか,陸上の河川を経て海洋に流れ込むので,終局的には海洋が多くの廃棄物の集積場ともなりかねない。…

※「放射能汚染」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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