日本大百科全書(ニッポニカ) 「中欧思想」の意味・わかりやすい解説
中欧思想
ちゅうおうしそう
中央ヨーロッパを再編・統合して一つのまとまりのある地域として安定させようとする構想や計画。歴史的には19世紀前半、プロイセンとハプスブルク帝国が協力して中央ヨーロッパでの現状維持を図るという考えに始まり、以後、関税同盟案などそのときどきの事情を反映させたさまざまな政治的・経済的統合案が提出され、中欧の範囲も一定していなかった。19世紀末からは、ドイツの勢力拡大の目標の一つに中欧での覇権の確立が唱えられた。とりわけ、第一次世界大戦中の1915年、J・F・ナウマンが『中欧論』Mitteleuropaを発表して、ドイツとオーストリア・ハンガリーの連邦的合体と統一経済圏の樹立を主張すると、中欧思想はドイツの戦争目的の一つとして注目された。
[木村靖二]