改訂新版 世界大百科事典 「中興名物」の意味・わかりやすい解説
中興名物 (ちゅうこうめいぶつ)
茶道具の位付を表す名物の一種。中興名物は小堀遠州の美意識によって選ばれた名品といえるが,その呼称は松平不昧(松平治郷(はるさと))の《古今名物類聚》に初見される。茶入でいえば,唐物・古瀬戸より後の,瀬戸窯や国焼(くにやき)の中から選ばれ,また大名物(おおめいぶつ)からもれた品も美の基準の問題として入ってくる。その典拠は,《遠州蔵帳》《八幡名物》《土屋蔵帳》《千家名物》《雲州蔵帳》などである。それは千利休以後の集成品であり,大名物を唐物とするならば,これは和物(国産)の世界である。茶入を例にとれば,遠州の王朝回帰の思想によって,和歌による歌銘,定家様の書付に和様化の深まりを見ることができる。それを松平不昧が中興名物と規定したことは,幕末にはすでに定着,古典化したことを意味する。
執筆者:戸田 勝久
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