中興名物 (ちゅうこうめいぶつ)
茶道具の位付を表す名物の一種。中興名物は小堀遠州の美意識によって選ばれた名品といえるが,その呼称は松平不昧(松平治郷(はるさと))の《古今名物類聚》に初見される。茶入でいえば,唐物・古瀬戸より後の,瀬戸窯や国焼(くにやき)の中から選ばれ,また大名物(おおめいぶつ)からもれた品も美の基準の問題として入ってくる。その典拠は,《遠州蔵帳》《八幡名物》《土屋蔵帳》《千家名物》《雲州蔵帳》などである。それは千利休以後の集成品であり,大名物を唐物とするならば,これは和物(国産)の世界である。茶入を例にとれば,遠州の王朝回帰の思想によって,和歌による歌銘,定家様の書付に和様化の深まりを見ることができる。それを松平不昧が中興名物と規定したことは,幕末にはすでに定着,古典化したことを意味する。
執筆者:戸田 勝久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の中興名物の言及
【大名物】より
…茶の湯道具の名物の中で,利休以前,とくに東山に隠棲した足利義政を中心とする東山時代に名を得た器物を大名物という。そして,利休時代に現れたものを名物,遠州時代のものを[中興名物]とし,これに大名物を加えた3段階の類別が行われている。しかしこれには,松平不昧(ふまい)が《古今名物類聚》(1787)の凡例で,遠州の選別したものを中興名物とし,それ以前をすべて,大名物と称したことを考慮しなければならない。…
【古今名物類聚】より
…1787年(天明7)の不昧の序があり,1789年(寛政1)から9年間にわたり4回にわけて出版された。中興名物茶入,大名物茶入,後窯(あとがま)国焼,天目茶碗,楽焼茶碗,雑記,拾遺,名物切(裂)の8部からなり,[大名物],名物,[中興名物]の呼称と格付けが行われており,江戸時代を通じて名物茶器を記した最高の茶書となっている。《日本古典全集》(1938)に所収。…
【名物】より
…広く人に知られている文物は,品物であれまた食物の類であっても,名物と称するが,美術用語とくに茶の湯の分野では,[千利休]の時代に名を得た名品を指している。これに対して,利休以前に知名のものを[大名物](おおめいぶつ)といい,利休以後小堀遠州の選定になるものを[中興名物]と呼んだ。ただ利休時代というのは,利休が盛名を得た1582年(天正10)から終焉までのおよそ10年間が基準となる。…
※「中興名物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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