朝日日本歴史人物事典 「久次米兵次郎」の解説
久次米兵次郎(9代)
生年:文政12.5.11(1829.6.12)
幕末明治期の阿波藍商,銀行家。阿波国(徳島県)名東郡北新居村の久次米家は,3代昌理が元禄11(1698)年に藍商として江戸出店を開設し,4代秀昌以降兵次郎をもって通称とした。5代兵次郎昌義が享保10(1725)年江戸材木商売を始め,以降同家は阿波藍と材木の商いで産をなし,徳島藩の藍行政にも参画した。本項の兵次郎は,9代義周であり,幼名国太郎といい,明治2(1869)年に家督を相続した。12年久次米銀行を設立して転進をはかる。同行の資本金50万円は当時私立銀行としては三井銀行に次ぐものであったが,明治10年代の拡張経営主義の破産と23年恐慌の打撃により崩壊を余儀なくされた。<参考文献>高嶋雅明「久次米銀行の分析―木材問屋の銀行経営―」(地方金融史研究会編『地方金融史論』),真貝宣光「阿波藍商の経営展開とその崩壊―久次米兵次郎家の場合―」(徳島地方史研究会編『阿波・歴史と民衆Ⅱ』)
(天野雅敏)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報